絶縁監視装置は、低圧電路の漏れ電流を常時監視し、設定値を超えると委託先へ警報を自動で伝送する装置です。この記事では、Io方式・Ior方式・Igr方式の違い、Ioが50mAを超えても絶縁不良とは限らない理由、隔月点検にするときの取り付けの手順と条件、警報が出たときの対応、月次点検と年1回以上の点検で確認する内容をまとめます。
絶縁監視装置とは
絶縁監視装置は、変圧器のB種接地線に流れる漏れ電流を連続して見張る装置です。月次点検でクランプメーターを当てて測っている電流を、点検と点検の間も監視し続けるものと考えると分かりやすくなります。測定そのものの考え方は漏れ電流の測定と判定の目安にまとめています。
産業保安監督部の設備条件確認書では、検知箇所は原則として変圧器ごととされています。漏れ電流が警報設定値以上になると警報を出し、委託契約の相手方、つまり電気管理技術者の側へ自動的に伝送して記録します。
Io方式・Ior方式・Igr方式の違い
違いは、B種接地線に流れる電流のうち、どの成分を見て警報を出すかです。設備条件確認書の記載をもとに整理します。
| 方式 | 検知する電流 | 確認書にある条件・特徴 |
|---|---|---|
| Io方式 | B種接地線を流れる漏れ電流(Io)そのもの | 絶縁不良がない定常状態でIoが十分小さいこと |
| Ior方式 | Ioから対地静電容量による成分を除いた、絶縁抵抗による成分(Ior) | 静電容量による成分を除去して検知する |
| Igr方式 | 対地絶縁抵抗による成分(Igr) | 商用周波数と異なる周波数の交流電圧を加え、Igrだけを分離して計測する |
Ioには、絶縁の劣化で流れる成分と、電路の対地静電容量で流れる成分の両方が含まれます。配線が長い事業場やインバータ機器が多い事業場では、絶縁が健全でも静電容量分でIoが大きくなります。Io方式に「定常状態でIoが十分小さいこと」という条件が付いているのはこのためです。平常時のIoが大きい事業場では、Ior方式かIgr方式を選ぶのが一般的です。
IoとIorは値が違う 50mAを超えても絶縁不良とは限らない
同じB種接地線でも、IoとIorは別の値です。Ioは、絶縁抵抗を通って流れる成分(Ior)と、対地静電容量を通って流れる成分を合わせた電流です。2つは位相が90度ずれているので、単純な足し算にはなりません。たとえばIorが5mA、静電容量分が60mAなら、Ioは約60mAです。クランプメーターに見えているのはほぼ静電容量分で、絶縁の状態を表すIorは5mAしかありません。
Ioが大きくなりやすいのは、次のような事業場です。
- 動力用(三相3線200V)の変圧器:1線を接地する結線では、残る2線の静電容量分が打ち消し合わず、接地線に戻ります。電灯用の変圧器より値が大きく出ます。
- インバータエアコン、LED照明、インバータ制御のモーターなど省エネ機器が多い事業場:機器のノイズフィルタにあるコンデンサを通じて、絶縁が健全でも大地へ電流が流れます。高い周波数の成分も重なります。
- 配線が長い、ケーブルの本数が多い事業場:電線と大地の間の静電容量が大きくなります。
こうした事業場では、Ioが50mA以上あっても、絶縁に問題がない場合があります。50mAという数字だけで絶縁不良とは決めず、Iorを測れる測定器やIor方式・Igr方式の装置の値、前回からの変化、回路ごとの切り分けで判断します。切り分けの手順は漏れ電流の測定と判定の目安にまとめています。
逆の注意もあります。Ioがいつも大きい事業場では、静電容量分に隠れて抵抗分の増加に気づきにくくなります。「いつも大きいから問題ない」で済ませず、Iorで確かめておきます。
平常時のIoが警報設定値に近い変圧器にIo方式の装置を付けると、絶縁が健全でも警報が出続けます。この場合はIor方式かIgr方式を選びます。
警報設定値は50mAが上限、許容誤差は±10%以内
警報設定値の上限は50mAです。主任技術者制度の解釈及び運用(内規)でも、警報動作電流の設定の上限値は50ミリアンペアとされています。何の電流に対する50mAかは、方式で違います。Io方式はIoそのもの、Igr方式は対地絶縁抵抗による成分です。実際の設定値は、平常時の漏れ電流と保安規程、委託契約の内容で決めます。
- 警報設定値:50mAを上限とする
- 許容誤差:警報値に対して±10%以内(50mA設定なら45〜55mAの範囲で動作)
隔月点検にするときの絶縁監視装置の取り付け
平成15年経済産業省告示第249号の第4条では、高圧の需要設備の点検は原則毎月1回以上です。設備容量が100kVAを超える需要設備を隔月1回以上にできるのは、第7号のイからニの設備条件をすべて満たし、さらに第8号イに当てはまる場合です。100kVA以下の需要設備は、イからニを満たせば隔月にできます。第8号イは、低圧電路の絶縁状態を適確に監視できる装置があること、または非常時に使う設備への電路以外の低圧電路に漏電遮断器が設置してあること、のどちらかです。絶縁監視装置は前者にあたります。
- イ:柱上に設置した高圧変圧器がない
- ロ:高圧負荷開閉器(キュービクル内のものを除く)に可燃性絶縁油を使っていない
- ハ:責任分界点またはその近くに、地絡保護継電器付高圧交流負荷開閉器か地絡遮断器がある
- ニ:責任分界点から主遮断装置の間に、定められた変成器以外の変成器がない
取り付けから隔月点検に切り替えるまでの手順
産業保安監督部の設備条件確認書と、絶縁監視装置の設備調査表の項目に沿って、流れを整理します。
- 設備条件を確かめる。上のイからニを現地で確認します。1つでも外れると、装置を付けても隔月にはできません。
- 平常時の漏れ電流を変圧器ごとに測る。電灯、動力、電灯・動力共用の別に、設備が動いている時間帯のIoを測ります。設備調査表には、この値を変圧器の用途ごとに記入します。
- 方式を選ぶ。Io方式は、絶縁不良がない定常状態でIoが十分小さいことが条件です。動力用の変圧器や省エネ機器の多い事業場でIoが大きい場合は、Ior方式かIgr方式にします。
- 検出器を取り付ける。変圧器2次側のB種接地線に、原則として変圧器ごとに検出用の変流器を付けます。Igr方式は、監視用の電圧を加える機器も同じ接地線に付けます。
- 警報設定値を決める。上限は50mA、許容誤差は警報値の±10%以内です。
- 警報の伝送先を設定する。警報は委託先へ自動で伝送し、記録が残るようにします。
- 動作を確かめる。試験ボタンで検知動作を確認し、警報が委託先の受信側に届いて記録されるところまで試験します。
- 書類を整え、保安規程と委託契約書の点検頻度を改める。
取り付けるときの注意
次の点は様式に書かれた条件ではなく、実務上の注意です。
- 変流器には、その変圧器のB種接地線だけを通します。ほかの接地線が一緒に入ったり、分岐した先の片方だけを通したりすると、正しい値になりません。
- 複数の変圧器のB種接地線が1本にまとまっている場合は、変圧器ごとに分けて検知できる位置を選びます。分けられないときは、所管の産業保安監督部に扱いを確認します。
- 通信に携帯回線を使う装置をキュービクルの中に付ける場合は、扉を閉めた状態で警報が委託先に届くかを試験します。金属の箱の中は電波が弱くなるためです。届かないときは、アンテナを箱の外に出すなどの対策をとります。
- 取り付け後に、装置の表示とクランプメーターの実測を比べます。Io方式で差が大きければ、取り付け位置を見直します。
300kVA以下の事業場の伝送
設備容量が300kVA以下の事業場は、委託先への自動伝送でなくても認められる形があります。連絡責任者が常駐する場所へ警報を自動で通報する装置があり、連絡責任者が電話などで委託先へ迅速に連絡できることが条件です。
提出する書類と保安規程の変更
隔月点検にするには、設備条件確認書と絶縁監視装置の設備調査表を作ります。装置のメーカー名、製品名、型式と、変圧器ごとの漏れ電流の値を書き、検知、警報、精度、伝送と記録、警報時の対応、年1回以上の点検の各項目について適否を記入します。様式は産業保安監督部によって、1枚にまとまっている場合と2枚に分かれている場合があります。
あわせて、保安規程と委託契約書の点検頻度を改めます。様式と提出の手続きは監督部ごとに案内されているので、所管の産業保安監督部に確認してください。
取り付けた後に条件を外れた場合
隔月点検を続けられるのは、条件を満たしている間だけです。設備調査表には、測定値が条件を満たさない場合は毎月点検とする、とあります。設備条件確認書には、新設の事業場で受電後の漏れ電流が警報設定値以上になった場合は、毎月1回の点検に変更して原因を報告する、という記載もあります。機器の増設でIoが増えたときは、方式の見直しも含めて検討します。
隔月点検にしたときの換算係数は0.6
隔月にした事業場は、同告示第3条により換算係数に0.6を乗じます。条件の詳細は月次点検を隔月や3か月に1回にできる条件、点数の出し方は換算点数の計算方法と早見表で説明しています。
絶縁監視装置の警報が出たときの対応の流れ
内規では「警報発生時」を、漏えい警報を連続して5分以上受信した場合、または5分未満の漏えい警報を繰り返し受信した場合と定めています。このときに行うことは、原因の調査と適切な処置、そして受信の記録を3年間保存することです。設備条件確認書の書き方も合わせると、流れは次のようになります。
- 受信した警報の内容を確認する。事業場、変圧器、継続時間、繰り返しの有無を見る。
- 事業場の連絡責任者に連絡し、設備の状態を確かめる。
- 必要に応じて、速やかに現地で点検する。
- 原因を調査し、設置者に改修などの処置を指示・助言する。
- 警報の受信記録を3年間保存する。
連絡責任者には、雨や清掃による水濡れ、機器の入れ替えや工事、特定の機械を動かした時刻との一致などを聞きます。これは実務上の例です。内規と設備条件確認書には「何時間以内に出向く」といった時間の定めはなく、「速やかに」とされています。時間を決めている場合は、保安規程や委託契約の定めに従います。
絶縁監視装置の月次点検と年1回以上の点検
月次点検で確認すること
ある保安規程の例では、絶縁監視装置について月次点検で次の4つを行います。これは一例で、実際の項目と頻度は各事業場の保安規程によります。
| 項目 | 見るところ |
|---|---|
| 外観点検 | 本体や変流器、配線の損傷・汚損、取付け状態、電源や表示の異常の有無 |
| 設定値の確認 | 警報設定値が保安規程・契約どおりで、50mAを超えていないこと |
| 検知動作試験 | 試験ボタンで警報が動作すること |
| 自動伝送試験 | 警報が委託先の受信側まで届き、記録されること |
Io方式の装置は、クランプメーターで測ったB種接地線の漏れ電流と表示値に大きな差がないかも見ておくと、装置の異常に早く気づけます。Ior方式やIgr方式の表示は抵抗分なので、クランプメーターで測るIoとは一致しません。月次点検全体の項目はキュービクルの月次点検の点検項目を参照してください。
年1回以上行う装置の点検
設備条件確認書では、次の4つの点検を毎年1回以上行うこととしています。
- 設定値の確認
- 試験ボタンによる検知動作の確認
- 設定値における誤差の確認(許容誤差は±10%以内)
- 伝送試験(警報を委託先へ自動伝送する場合)
誤差の確認は試験器が必要になるため、年次点検に合わせて行うのが一般的です。
よくある質問
- Q絶縁監視装置を付ければ、必ず隔月点検にできますか
- A
できるとは限りません。告示第4条第7号のイからニの設備条件をすべて満たすことが前提です。装置の側も、設定値の上限や許容誤差、自動伝送と記録などの条件を満たす必要があります。様式は所管の産業保安監督部に確認してください。
- Q警報設定値は50mAにしておけばよいですか
- A
50mAは上限で、合わせる値ではありません。設定値は保安規程や委託契約で定めた値とし、月次点検のたびに変わっていないことを確認します。
- Q警報が短時間で復帰した場合も対応が必要ですか
- A
内規では、5分未満の漏えい警報でも、繰り返し受信した場合は警報発生時にあたります。受信の記録を残し、連絡責任者に状況を聞いたうえで原因を調べます。
- Q平常時のIoが50mAを超える事業場は隔月点検にできませんか
- A
Io方式の装置では条件を満たしません。Ior方式かIgr方式の装置で、絶縁抵抗による成分が警報設定値を下回っていることを確かめます。条件を満たさない間は毎月点検です。
絶縁監視装置の点検記録を電気保安DXでまとめる
iPhoneとiPadで使える電気保安DXは、事業場ごとに点検項目を登録しておけば、毎月は測定値と良否を入れるだけでA4の月次点検報告書になります。点検項目は追加・削除・並び替えができるので、絶縁監視装置の設定値確認や動作試験、伝送試験の行を足しておけます。測定値は前回の値と差分が入力欄に出ます。点検スケジュールと換算点数の自動計算は無料で、報告書は1事業場まで無料、Pro(月額2,980円)で全事業場に使えます。
この記事は、平成15年経済産業省告示第249号、主任技術者制度の解釈及び運用(内規)、産業保安監督部が公開している設備条件確認書と絶縁監視装置の設備調査表(関東東北産業保安監督部、中国四国産業保安監督部四国支部)の内容をもとに作成しています。実際の点検項目や警報時の対応は、各事業場の保安規程と委託契約、所管の産業保安監督部の指示に従ってください。