漏れ電流の測定と基準、B種接地線のIoの判定と月次点検での見方

月次点検で測るB種接地線の漏れ電流(Io)には、法令で決まった一律の合否値がありません。電技解釈第14条の1mA、絶縁監視装置の警報設定値の上限50mA、現場で使う目安は、それぞれ別のものです。クランプメーターでの測り方、IoとIor・Igrの違い、値が大きいときの切り分け、報告書への書き方をまとめます。

目次

月次点検で漏れ電流を測る目的

B種接地線の漏れ電流(法令や内規では「漏えい電流」と書きます)の測定は、低圧回路の絶縁状態を停電せずに確かめるための項目です。主任技術者制度の解釈及び運用(内規)は、月次点検を設備が運転中の状態で行い、B種接地工事の接地線に流れる漏れ電流を測ることを示しています。

低圧回路から大地に漏れた電流は、B種接地線を通って変圧器に戻ります。ここを測れば、その変圧器につながる低圧回路全体をまとめて見られます。月次のほかの項目はキュービクルの月次点検の点検項目を見てください。

クランプメーターでの漏れ電流の測り方と注意点

条件をそろえないと、前月の値と比べられません。手順は次のとおりです。

  1. 変圧器ごとに、B種接地線を1本だけクランプします。接地線が高圧の充電部に近いときは、無理に挟みません。
  2. ジョーを完全に閉じ、表示が落ち着いてから読みます。
  3. 負荷が動いている状態で測り、時刻とおもな負荷の運転状況を控えます。
  4. フィルタ機能のある機種は、入と切のどちらで読むかを決め、毎月そろえます。

値には、絶縁の良し悪し以外の要素が入ります。

  • 測定箇所:接地線が分かれている、ほかの接地と共用されている場合は、挟む位置で値が変わります。毎回同じ位置で測ります。
  • 外部磁界:変圧器や大電流の電線のそばでは、表示が影響を受けます。クランプの位置を変えて、値が動かないか確かめます。
  • 負荷の運転状況:機器が動いているときだけ流れる漏れ電流があります。休業日の値は、稼働日の値と比べられません。
  • 高調波:インバータやスイッチング電源が多いと、高い周波数の成分が重なり、値が大きく出ます。
  • 対地静電容量:配線が長い回路や、ノイズフィルタ内蔵の機器が多い回路では、絶縁が良くても電流が流れます。
  • 動力用の変圧器:三相3線200Vで1線を接地する結線では、残る2線の静電容量分が打ち消し合わず、電灯用の変圧器より値が大きく出ます。
  • 単相3線式:両側の電圧線からの漏れ電流が打ち消し合い、差の分だけが接地線に戻ります。値が小さくても、絶縁不良がないとは言い切れません。

IoとIor、Igrの違い

Ioは接地線に流れる電流の全体、Iorはそのうち絶縁抵抗を通って流れる成分です。Igrは、監視用の信号を加えて抵抗分を取り出す方式での呼び方です。

記号見ているもの測り方
IoB種接地線を通って流れる漏れ電流の全体。抵抗分と対地静電容量分が合わさった値クランプメーターで接地線を挟んで読む
IorIoから対地静電容量による成分を除いた、絶縁抵抗によって流れる成分電圧と電流を取り込んで演算する測定器や、Ior方式の絶縁監視装置で測る
Igr商用周波数と異なる周波数の交流電圧をB種接地線を通じて加え、絶縁抵抗による成分だけを分けて測ったものIgr方式の絶縁監視装置で測る

感電や火災につながるのは抵抗分です。月次点検で読むIoは静電容量分を含むため、絶縁抵抗の値には換算できません。Ioが大きいから絶縁不良とは限らず、逆に、静電容量分の陰で抵抗分の増加が見えにくいこともあります。

漏れ電流の判定基準は何mAか

B種接地線のIoについて、法令や内規に一律の合否値は見当たりません。内規は測定を求めていますが、何mAまでを良とするかは示していません。よく出てくる数値は、出どころと対象が違います。

数値出どころ何に対する値か
1mA以下電気設備の技術基準の解釈 第14条第1項第二号絶縁抵抗測定が困難な場合に、開閉器や過電流遮断器で区切れる電路ごとに、使用電圧が加わった状態で測る漏れ電流
50mA(上限)主任技術者制度の解釈及び運用(内規)、産業保安監督部の設備条件確認書絶縁監視装置の警報動作電流の設定値。Io方式はIo、Igr方式は絶縁抵抗による成分に対する値
事業場ごとの管理値や目安保安規程、過去の測定値月次点検でB種接地線のIoをどう見るか。法令上の基準ではない

第14条の1mAは、区切った電路ごとに当てる基準です。停電できる回路は省令第58条の絶縁抵抗値で判定します(絶縁抵抗測定の電圧と判定基準)。その変圧器につながる回路全体の電流が集まるB種接地線には、絶縁不良がなくても静電容量分の電流が流れます。1mAをそのまま当てはめるものではありません。

50mAは警報設定値の上限で、月次の測定値の合否ラインではありません。内規では、設定値以上の漏えい警報を連続して5分以上受信したとき、または5分未満の警報を繰り返し受信したときに、原因を調べて処置し、受信の記録を3年間保存するとしています。装置側の確認は絶縁監視装置の仕組みと確認項目にまとめています。

動力用の変圧器や、インバータエアコンなど省エネ機器の多い事業場では、Ioが50mA以上あっても絶縁に問題がない場合があります。静電容量分が大きいためです。IoとIorは別の値なので、Iorを測れる測定器で抵抗分が小さいことを確かめます。

保安規程の管理値と前回値で判断する

保安規程に管理値があれば、それに従います。なければ、その事業場の健全なときの値を基準に、前回や前年同月からの変化で判断します。配線と動いている機器が同じなら、静電容量分は大きく変わりません。同じ条件で測って値が増えたなら、抵抗分の増加か設備の変更を疑います。前回値と比べる意味はここにあります。

漏れ電流が大きいときの切り分け手順

値が大きいとき、前回から増えたときは、電源側から負荷側へ順に絞り込みます。

  1. クランプの位置を変え、フィルタの入と切で測り直します。フィルタで大きく下がるなら、高い周波数の成分が主です。
  2. 前回や前年同月の値と比べ、機器の増設や入替えがなかったかを設置者に聞きます。
  3. 低圧幹線ごとに、電線を一括でクランプして測ります。単相2線式は2線、単相3線式と三相3線式は3線、三相4線式は4線をまとめて挟みます。
  4. 値の大きい幹線は、分岐回路、機器の接地線へと追います。設置者の了解が得られれば、機器を止めて値の変化を見ます。
  5. 特定の機器が動いたときだけ出る場合は、時間帯を変えて測るか、記録計で連続して記録します。
  6. 絞り込んだ回路は、停電できる機会に絶縁抵抗を測って確かめます。

Iorを測れる測定器があれば、抵抗分が増えているかどうかの見当を早くつけられます。原因が分からないまま増加が続くときは、設置者に伝え、年次点検での調査を提案します。

月次点検報告書への漏れ電流の書き方

「良」とだけ書かず、翌月に比べられるように数値と条件を残します。

  • 変圧器ごとの測定値(mA)
  • 測定時刻、フィルタの入・切、おもな負荷の運転状況
  • 前回値との差
  • 増えた場合は、切り分けの経過、推定した原因、設置者に伝えた内容、次回確認すること

報告書全体の記載項目は月次点検報告書の書き方と記載項目で説明しています。

よくある質問

QB種接地線の漏れ電流は何mAまでなら問題ありませんか
A

法令に一律の値はありません。保安規程に管理値があればそれに従い、なければ健全なときの値と毎月の推移で判断します。

QIoが1mAを超えたら絶縁不良ですか
A

そうとは限りません。1mAは電路ごとの基準で、B種接地線には変圧器につながる回路全体の静電容量分が加わります。回路ごとに一括でクランプし、1mAを超える回路があれば、絶縁抵抗を測って確かめます。

Q絶縁監視装置の警報設定値は50mAにしておけばよいですか
A

50mAは上限です。設定値は、その事業場のふだんの漏れ電流を踏まえて、上限の範囲内で決めます。

月次の漏れ電流の記録を電気保安DXでまとめる

電気保安DXは、iPhoneとiPadで使える電気管理技術者向けのアプリです。事業場ごとに変圧器と点検項目を一度登録すれば、毎月は測定値と良否を入れるだけでA4の月次点検報告書になります。入力欄に前回の値と差分が出るので、漏れ電流の増減にその場で気づけます。報告書は印刷とPDF共有ができ、1事業場までは無料、Pro(月額2,980円)で全事業場に使えます。

この記事は、電気設備の技術基準の解釈 第14条、電気設備に関する技術基準を定める省令 第58条、主任技術者制度の解釈及び運用(内規)、産業保安監督部の設備条件確認書の内容をもとに作成しています。実際の判定は、各事業場の保安規程に従ってください。

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