非常用予備発電装置の月次点検は、電気事業法の保安規程にもとづいて行います。基本は外観点検で、保安規程によっては無負荷の始動・停止試験と、発電電圧・周波数の測定が加わります。この記事では、点検項目、点検表に残す値と記入例、消防法の自家発電設備点検との違いを整理します。
非常用発電機の月次点検は何をするのか
月次点検でやることは、事業場ごとの保安規程で決まります。経済産業省の「主任技術者制度の解釈及び運用(内規)」は、月次点検の外観点検の対象に、発電設備(原動機、発電機、始動装置等)と蓄電池設備を挙げています。停電時に自動で起動して復電後に停止すること、発電電圧と周波数(回転数)が正常であることの確認は、内規では年次点検の内容です。
一方、産業保安監督部が公開している保安規程の点検基準例には、非常用予備発電設備の月次点検として、外観点検、始動停止試験、発電電圧・周波数等測定を挙げたものがあります。この形の保安規程では、毎月の巡回で無負荷の試運転をして記録を残します。受け持ち先がどちらなのかは、保安規程の別表で確認してください。受電設備側の項目はキュービクルの月次点検の点検項目にまとめています。
非常用予備発電装置の点検項目(外観点検)
外観点検は、待機状態のまま目視、音、臭いで確認します。見るところの一般的な例を表にします。法令で決まった一覧ではないので、項目名は保安規程や点検表の様式に合わせてください。
| 対象 | 見るところ(一般的な例) |
|---|---|
| 原動機 | 漏油、漏水、ボルトのゆるみ、配管やホースの劣化、Vベルトの損傷 |
| 発電機・励磁装置 | 損傷、汚損、端子部の変色や過熱の跡、異臭 |
| 始動装置 | 始動用蓄電池の液面、端子の腐食、充電器の表示。空気始動式は空気槽の圧力 |
| 燃料 | タンクの残量、漏れ、燃料コックの開閉状態 |
| 冷却水 | 水量、漏れ、ラジエーターの汚れ |
| 潤滑油 | 油量、汚れ、漏れ |
| 排気・給排気 | 排気管と消音器の損傷、断熱材の脱落、給排気口をふさぐ物の有無 |
| 制御盤 | 切替スイッチが自動になっているか、故障表示、表示灯、計器の指針 |
| 接地・据付 | 接地線の取付け状態、基礎ボルト、周囲の可燃物 |
蓄電池設備は、点検基準例では月次は外観点検だけです。セルの電圧、電解液の比重、温度の確認は、内規でも年次点検の内容になっています。
始動・停止試験と発電電圧・周波数の測定手順
月次の始動停止試験は、負荷をつながない無負荷の試運転で行うのが一般的です。操作は機種で違うので、取扱説明書と保安規程に従ってください。流れの一例は次のとおりです。
- 設置者に試運転をすることを伝え、警報の移報先を確認する。
- 始動前に、燃料、潤滑油、冷却水の量と、蓄電池電圧、盤の故障表示を確認する。
- 盤の試験スイッチか手動操作で始動し、無負荷で運転する。始動のかかり具合を見る。
- 電圧と周波数が落ち着いたら、発電電圧、周波数、油圧、水温を読む。異音、異常な振動、漏油、漏水、排気の状態も確認する。
- 停止操作をして、確実に止まることを確認する。
- 切替スイッチを自動に戻し、故障表示が出ていないことを確認する。運転時間計の値を控える。
最後の「自動に戻す」を忘れると、停電時に起動しません。盤を閉める前にもう一度見ます。停電時の自動起動と復電後の停止の確認は、年次点検で行います。
点検表に記録する項目と記入例
内規は発電電圧と周波数が正常であることの確認を求めていますが、判定の数値は示していません。良否は、保安規程、メーカーの取扱説明書や試験成績書の値と、前回までの記録との比較で判断します。記録に残す項目の一般的な例と記入例です。数値はすべて例です。
| 記録項目 | 記入例(数値は例) | 確認の観点 |
|---|---|---|
| 運転時間計 | 始動前182.4h、停止後182.6h | 試運転の時間と累計の運転時間 |
| 発電電圧 | 202V(定格200V) | 定格との差、相間のばらつき |
| 周波数 | 50.2Hz(定格50Hz) | 安定しているか |
| 潤滑油圧力 | 0.45MPa | メーカー指定値の範囲か、前回との差 |
| 冷却水温度 | 55℃ | 上がり方が前回と変わらないか |
| 始動用蓄電池電圧 | 26.5V(24V系) | 充電器の電圧、前回との差 |
| 燃料残量 | 150L | 必要な運転時間をまかなえる量か |
| 始動・停止 | 良 | 始動のかかり具合、確実に停止するか |
| 異音・振動・漏れ | 異常なし | 油、水、燃料、排気の漏れ |
参考として、消防法側の点検要領は、機器点検の運転性能を無負荷で5〜10分運転して確認し、無負荷時の電圧を定格電圧の±2.5%以内としています。保安規程に数値がないときの目安になります。報告書全体の書き方は月次点検報告書の書き方と記載項目を見てください。
消防法の自家発電設備点検との違い
電気事業法の保安規程にもとづく点検と、消防法にもとづく非常電源(自家発電設備)の点検は、別の制度です。同じ発電機でも、周期、点検する人、報告先が違います。月次点検の記録は、消防法の点検の代わりにはなりません。
| 項目 | 電気事業法(保安規程) | 消防法 |
|---|---|---|
| 対象 | 自家用電気工作物としての非常用予備発電装置 | 消防用設備等の非常電源として設置された自家発電設備 |
| 周期 | 保安規程で定める月次点検、年次点検 | 機器点検は6か月に1回、総合点検は1年に1回 |
| 運転の確認 | 保安規程による。月次は無負荷の始動停止試験とする例がある | 機器点検で始動・運転・停止の性能、総合点検で負荷運転または内部観察等 |
| 点検する人 | 電気主任技術者、外部委託先の電気管理技術者など | 防火対象物の用途と規模により、消防設備士または消防設備点検資格者 |
| 記録・報告 | 設置者が記録を確認して保存する | 消防長または消防署長へ報告。特定防火対象物は1年に1回、それ以外は3年に1回 |
平成30年の点検基準改正で変わった点
消防法側の点検基準は、平成30年6月1日に改正されました。消防庁の資料によると、変更点は次の4つです。
- 総合点検の運転性能の確認は、負荷運転のほかに内部観察等でもよくなった。
- 予防的な保全策を講じていれば、負荷運転または内部観察等の周期を6年に1回まで延ばせる。
- 原動機にガスタービンを使う自家発電設備は、負荷運転が不要になった。
- 換気性能の点検は、負荷運転時ではなく無負荷運転時などに行うことになった。
負荷運転は、定格出力の30%以上の負荷をかけて行う点検です。設置者から負荷試験について聞かれたら、消防法の総合点検の話であることを伝え、消防設備の点検業者と所轄の消防署に確認してもらいます。なお、建築基準法の建築設備の定期検査でも、排煙設備や非常用の照明装置の予備電源として、自家用発電装置が検査項目に入っています。
よくある質問
- Q月次点検で負荷をかけた運転は必要ですか
- A
電気事業法側では、保安規程に定めがなければ必要ありません。内規が月次点検として示すのは外観点検で、保安規程の点検基準例でも月次は始動停止試験と発電電圧・周波数の測定です。負荷運転が出てくるのは、消防法の総合点検です。
- Q毎月の月次点検をしていれば消防法の点検は不要ですか
- A
不要にはなりません。消防用設備等の非常電源になっている発電機は、月次点検とは別に、機器点検と総合点検を行い、結果を消防署へ報告する必要があります。
- Q始動用蓄電池の電圧や比重は毎月測りますか
- A
点検基準例では、蓄電池設備の月次点検は外観点検だけで、測定は年次点検側です。ただ、試運転のたびに盤の電圧計の値を控えておくと、前回との差から劣化の傾向をつかめます。
非常用発電機の点検記録を電気保安DXでまとめる
iPhoneとiPadで使える電気保安DXの月次点検報告書には、非常用発電機のテンプレートがあります。事業場ごとに点検項目を一度登録すれば、毎月は測定値と良否を入れるだけでA4の報告書になり、入力欄には前回の値と差分が出ます。点検項目は追加、削除、並び替えができるので、保安規程の別表に合わせられます。報告書は1事業場まで無料、Pro(月額2,980円)で全事業場に使えます。
この記事は、経済産業省「主任技術者制度の解釈及び運用(内規)」、産業保安監督部が公開している保安規程の点検基準例、消防庁「自家発電設備の点検基準等の改正」の関連資料をもとに作成しています。実際の点検項目と周期は、各事業場の保安規程と所轄の消防本部の指導に従ってください。