高圧受電設備の年次点検は、1年に1回以上、原則として停電して行います。確認する内容は、絶縁抵抗、接地抵抗、保護継電器と遮断器の連動、非常用予備発電装置、蓄電池、高濃度PCBの該当確認の6つです。この記事では、内規で示された試験項目、停電年次と無停電年次の違い、無停電にできる条件、停電作業の段取りを整理します。
年次点検とは 月次点検との違い
月次点検は設備が運転中の状態で行う点検です。年次点検は、停電で設備を止めた状態でしか確認できない項目を加えた点検です。外部委託の事業場については「主任技術者制度の解釈及び運用(内規)」が、月次点検の内容に加えて年次点検を1年に1回以上行うことを求めています。
月次で見る範囲はキュービクルの月次点検の点検項目にまとめています。実際にどの項目を月次と年次のどちらで行うかは、各事業場の保安規程の定めによります。
年次点検の項目 内規で示された6つの確認事項
内規は、次の全項目の確認と、必要に応じた測定や試験を求めています。
| 項目 | 確認する内容 | 内規が示す基準 |
|---|---|---|
| 絶縁抵抗 | 低圧電路の絶縁抵抗が基準値以上であること。高圧電路が大地や他の電路と絶縁されていること | 電気設備に関する技術基準を定める省令 第58条 |
| 接地抵抗 | 接地抵抗値が基準値以下であること | 電気設備の技術基準の解釈 第17条 |
| 保護継電器 | 動作特性試験と、保護継電器と遮断器の連動動作試験の結果が正常であること | 指定なし |
| 非常用予備発電装置 | 常用電源の停電時に自動で起動し、復旧後に停止すること。発電電圧と周波数(回転数)が正常であること | 指定なし |
| 蓄電池設備 | セルの電圧、電解液の比重、温度などが正常であること | 指定なし |
| 高濃度PCBの確認 | 変圧器、電力用コンデンサ、計器用変成器、開閉器、遮断器、避雷器などが高濃度PCB含有電気工作物に当たるかどうか | PCB管理標準実施要領 |
「指定なし」の項目は、内規が「正常であること」とだけ定めているものです。整定値や機器の仕様に照らして判定します。判定値の詳細は絶縁抵抗測定の電圧と判定基準と接地抵抗の基準値で扱っています。
保安規程によっては、これに加えて絶縁油の試験、機器の内部点検や清掃を年次点検に置いています。一例であり、事業場ごとの保安規程を確認してください。
停電年次点検と無停電年次点検の違い
違いは設備を止めるかどうかです。無停電年次点検は停電年次点検の代わりではなく、停電点検の間の年に行う点検です。
| 停電年次点検 | 無停電年次点検 | |
|---|---|---|
| 設備の状態 | 停電して停止状態で行う | 充電状態のまま行う |
| 位置づけ | 原則。1年に1回以上 | 条件を満たす機器で、停電点検を3年に1回以上にした場合の残りの年に行う |
| 確認の方法 | 絶縁抵抗や接地抵抗を直接測定し、継電器試験と連動試験を行う | 内規の項目と同等と認められる方法で確認する |
無停電年次点検の条件 3年に1回は停電点検が必要
内規のただし書きは、信頼性が高く、かつ内規の項目と同等と認められる点検が1年に1回以上行われている機器に限り、停電して行う点検を3年に1回以上にできるとしています。3年のうち1年は停電年次点検、残り2年が無停電年次点検です。
経済産業省は「信頼性が高い」の考え方として、次のような点を示しています。
- リコールや保安上の注意喚起の対象でないなど、機器そのものに支障がないこと
- 点検頻度の告示(平成15年経済産業省告示第249号)の設備条件に適合していること
- 腐食性ガス、高温多湿、塩害などの環境に対策なしで置かれていないこと
- 前回の停電年次点検と、その後の無停電年次点検、月次点検の結果に支障がないこと
- 製造者が推奨する更新時期内か、次回の停電点検までの余寿命を評価していること
- 停電と無停電それぞれの実施方法を保安規程などに定めていること
運用の細部は産業保安監督部ごとに資料があります。たとえば関東東北産業保安監督部は、区分開閉器(PAS)の製造後年数を原則10年以内(供給用配電箱に置くものは15年以内)とする条件や、電気管理技術者が事業場ごとに年次点検実施マニュアルを作ること、設置者が今後20年間の長期年次点検計画を作ることを求めています。適用の前に所管の監督部に確認してください。
無停電の年に行う点検の例
- 絶縁:絶縁監視装置や漏れ電流計の測定結果と外観点検。必要に応じて部分放電の探査やサーモグラフィ
- 接地:簡易測定法の値に余裕をみた推定、過去の測定値の評価と外観点検
- 保護継電器:前回の停電時に行った動作特性試験や引外し回路の測定結果の確認
- 非常用予備発電装置:模擬信号などによる自動起動と停止、発電電圧と周波数の確認
- 蓄電池:セルの電圧、電解液の比重、温度の確認
これらは経済産業省が挙げた例示で、方法はこれに限られません。
停電年次点検の当日の流れと段取り
一般的な流れは次のとおりです。操作の順序や担当は設備と保安規程、作業手順書に合わせてください。
- 設置者と日程を決めます。停電する時間帯と、止めると困る設備(サーバー、冷凍冷蔵、消防設備、警備装置など)を洗い出します。
- 設置者から従業員やテナントへ、停電の日時と範囲を周知してもらいます。
- 作業前の打合せで、作業範囲、役割、停電しても充電が残る部分(区分開閉器の電源側など)を確認します。
- 負荷を止め、負荷側から順に開放します。一般には低圧の遮断器、主遮断装置、断路器、区分開閉器の順です。断路器は無負荷を確かめてから操作します。
- 開放した開閉器に通電禁止の表示や施錠をします。ケーブルやコンデンサの残留電荷を放電します。
- 検電器で停電を確認し、短絡接地器具を取り付けます。
- 清掃、内部の点検、絶縁抵抗と接地抵抗の測定、保護継電器の試験と連動試験を行います。
- 作業後、工具や測定用の配線の置き忘れ、外した接続の復旧、短絡接地器具の取り外し、人が離れたことを確認します。
- 電源側から順に投入し、電圧と負荷設備の運転を設置者と一緒に確認します。
- 結果と不良箇所を設置者に報告し、記録を残します。
手順5と6、手順8の通電前の確認は、労働安全衛生規則第339条が停電作業の措置として定めている内容です。短絡接地器具を外し忘れたまま復電して短絡に至った事例も、産業保安監督部の事故事例に載っています。
年次点検の時期は年間の計画に入れておく
停電年次点検は設置者の休業日に合わせることが多く、日程は早めに押さえます。事業場ごとに実施月を決め、停電の年か無停電の年かも書いておくと抜けを防げます。作り方は年間点検計画表の作り方を参照してください。
よくある質問
- Q年次点検は必ず停電しなければなりませんか
- A
原則は1年に1回以上の停電点検です。信頼性が高く、同等と認められる点検を毎年行っている機器に限り、停電点検を3年に1回以上にできます。その場合も3年に1回は停電が必要です。
- Q無停電年次点検に切り替えるには手続きが必要ですか
- A
保安規程に無停電年次点検の頻度と内容を定める必要があります。関東東北産業保安監督部の例では、外部委託承認申請書などに要件のチェックリスト、年次点検実施マニュアル、長期年次点検計画などを添付します。書類は所管の監督部に確認してください。
- Q年次点検を実施できなかった場合はどうなりますか
- A
保安規程の遵守義務に反します。産業保安監督部の立入検査では年次点検の未実施が指摘されており、電気管理技術者が厳重注意を受けた例も公表されています。設置者の都合で停電できないときも、技術的な根拠なしに延ばさず、日程を再調整します。
年次点検の予定を電気保安DXで管理する
電気保安DXは、月次点検と年次点検の予定を事業場ごとに管理できるiPhone、iPad向けのアプリです。年間表で年次点検の月を確認でき、予定管理と換算点数の自動計算は無料で使えます。月次点検報告書の作成は1事業場まで無料で、Pro(月額2,980円)にすると全事業場で使えます。
この記事は、経済産業省「主任技術者制度の解釈及び運用(内規)」、同省電力安全課の停電点検の延伸要件に関する資料、関東東北産業保安監督部「無停電年次点検の適用の考え方」(令和5年7月25日運用)、労働安全衛生規則第339条をもとに作成しています。実際の点検内容と頻度は各事業場の保安規程と所管の産業保安監督部の運用に従ってください。