電気管理技術者の道具と測定器 月次点検と年次点検で必要なもの

電気管理技術者が外部委託を受けるには、告示で定められた機械器具を保有していることが要件です。月次点検は腰道具とクランプメーターで回り、年次点検の試験器は借用でまかなう人も多くいます。保有が求められるものと、月次点検、年次点検、車の中で使うものを分けて一覧にし、選ぶときの目安を書きます。製品名や価格は書きません。

目次

電気管理技術者に保有が求められる機械器具

平成15年経済産業省告示第249号第2条で、電気管理技術者が備えるべき機械器具が定められています。申請のときは機械器具の保有状況届出書に書いて出します。

機械器具備考
絶縁抵抗計低圧用と高圧用を別に備える人が多い
電流計漏れ電流が測れるクランプ形が実用的
電圧計テスターでよい
低圧検電器月次点検でも使う
高圧検電器停電作業の検電に使う
接地抵抗計年次点検で使う
継電器試験装置必要なときに使える措置があれば保有を省ける
絶縁耐力試験装置同上
騒音計、振動計、回転計需要設備と太陽電池発電所などだけを受託する場合は不要

継電器試験装置と絶縁耐力試験装置は、委託先または設置者が必要なときに使える措置を講じていれば、保有しなくてもよいとされています。協会の貸出や試験機関からの借用がこれにあたり、申請では試験装置貸出承諾書などで示します。設置者が備え付けている機械器具も除外できます。

月次点検で持ち歩く道具

月次点検は設備が運転中の状態で行います。外観点検と、電圧、負荷電流、変圧器ごとの漏れ電流の測定、設置者への問診が主な内容です。持ち歩くのは次のものです。

道具使いどころ
クランプメーター(漏れ電流が測れるもの)B種接地線の漏れ電流、変圧器ごとの負荷電流
テスター低圧側の電圧
放射温度計端子部や変圧器の過熱の有無
低圧検電器低圧回路の充電確認
懐中電灯キュービクルの奥、碍子やケーブル端末の汚損
双眼鏡引込柱の碍子、区分開閉器、電線の離隔
ドライバー、スパナ、六角レンチキュービクルの扉、端子カバーの開閉
絶縁手袋、ヘルメット、保護めがね充電部の近くでの作業
点検表、筆記具、カメラ記録

クランプメーターは漏れ電流が読める分解能で選ぶ

月次点検で毎回使うのはクランプメーターです。負荷電流を読むだけなら安価なものでも足りますが、B種接地線の漏れ電流は数mAから数十mAの範囲を読むので、mA単位の分解能が要ります。高調波の影響を受けにくい測定方式のもの、抵抗分の漏れ電流(Ior)が分かるものを使う人もいます。判定の目安は漏れ電流の測定と判定の目安にまとめています。

放射温度計は毎月同じ場所を測る

放射温度計は、変圧器の外箱や端子部、ケーブル端末の温度を非接触で測ります。測る位置と距離を毎月そろえないと、前回との比較に意味がありません。報告書に前回値を並べておくと、温度の上がり方で接続部の緩みに気づけます。点検項目の全体はキュービクルの月次点検の点検項目を見てください。

年次点検で使う測定器と試験器

年次点検は停電して行う試験が中心です。月次の道具に加えて、次のものが要ります。

測定器・試験器使いどころ入手のしかた
絶縁抵抗計(低圧用)低圧回路、低圧機器の絶縁抵抗保有
絶縁抵抗計(高圧用)高圧ケーブル、変圧器、遮断器の絶縁抵抗保有
接地抵抗計A種、B種、C種、D種の接地抵抗保有
継電器試験装置過電流継電器、地絡継電器の動作試験借用でも可
絶縁耐力試験装置新設や改修後の耐圧試験借用でも可
高圧検電器停電後の無電圧確認保有
短絡接地器具作業中の誤送電からの保護保有
検相器復電前の相順確認保有

絶縁抵抗計は、測定電圧で使い分けます。低圧回路は回路の電圧に応じた測定電圧、高圧側は高圧用の測定電圧で測ります。測定電圧と判定の基準は絶縁抵抗測定の電圧と判定基準に書いています。接地抵抗計は補助接地棒を打てない場所があるので、補助極を使わない方式の測定ができるものを持っておくと困りません。基準値は接地抵抗の基準値にまとめています。

継電器試験装置は借りるか買うかを件数で決める

継電器試験装置は高価で、使うのは年次点検のときだけです。受託件数が少ないうちは、協会の貸出や試験機関からの借用で足ります。年次点検が月に何件も入るようになると、借用の日程調整が負担になるので、そのときに購入を考えます。試験の内容は保護継電器試験の方法と周期に書いています。

車に積んでおくもの

電気管理技術者の事務所は車の中です。報告書を車の中で仕上げて、その場で設置者に渡す人が多いので、印刷の道具も車に載せます。

  • モバイルプリンターとA4用紙、予備のインクまたは感熱紙
  • スマートフォンやタブレットの充電器、モバイルバッテリー
  • 予備の乾電池(クランプメーター、検電器、懐中電灯の分)
  • 絶縁テープ、結束バンド、ウエス、清掃用のブラシ
  • 予備のヒューズ、表示灯の球など、設置者から頼まれやすい小物
  • 長靴、雨具、夏の冷却用品、冬の防寒具
  • 三角表示板、発煙筒、ゴム手袋などの安全用品

測定器は温度変化で狂うので、真夏の車内に置きっぱなしにしないようにします。校正の記録は、申請や監査で確認されることがあるので、購入日と校正日を一覧にして車に置いておきます。

道具を選ぶときの目安

  1. 月次点検で毎回使うものから買う。クランプメーター、放射温度計、検電器、懐中電灯の4つは独立前にそろえる
  2. 年次点検の試験器は、最初の年は借用で回し、件数が増えてから買う
  3. 測定器は校正証明書が付くものを選び、校正の周期を決めておく
  4. 予備を持つ。検電器とクランプメーターは、壊れると点検ができなくなる
  5. 絶縁手袋は定期的な耐圧試験が必要なので、試験に出す段取りを決めておく

よくある質問

Q電気管理技術者の道具は最初に全部そろえる必要がありますか
A

告示で定められた機械器具は、申請のときに保有状況を届け出ます。継電器試験装置と絶縁耐力試験装置は、借用の承諾があれば保有しなくてもよいので、最初は借用で申請する人が多いです。

Q漏れ電流はふつうのクランプメーターで測れますか
A

負荷電流用のクランプメーターでは、mA単位の漏れ電流は読めません。漏れ電流の測定ができるクランプメーターを使います。

Q騒音計や振動計は必要ですか
A

需要設備と太陽電池発電所などだけを受託する場合は、告示で除外されています。内燃力発電所などを受託する場合は要ります。

測定値の記録と報告書を電気保安DXでまとめる

電気保安DXは、iPhoneとiPadで使える電気管理技術者向けのアプリです。事業場ごとに変圧器と点検項目を一度登録しておけば、毎月は測定値と良否を入れるだけでA4の月次点検報告書になり、入力欄に前回の値と差分が出ます。印刷とPDF共有ができるので、車の中でモバイルプリンターで印刷してその場で渡せます。点検スケジュールと換算点数の計算は無料で、報告書は1事業場まで無料、全事業場で作る場合はPro(月額2,980円)です。

この記事は、平成15年経済産業省告示第249号第2条の機械器具の定めと、主任技術者制度の解釈及び運用(内規)の月次点検の内容をもとに作成しています。保有すべき機械器具と申請書類は、所管の産業保安監督部で確認してください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次