キュービクルの清掃方法と頻度 停電時の手順と機器の更新目安

キュービクルの清掃は、年次点検の停電時に、外箱、フィルター、碍子、母線と機器の順に行います。この記事では、電気管理技術者が年次点検のついでに行う清掃の手順と道具、やってはいけないこと、頻度の考え方をまとめ、あわせて変圧器や遮断器など機器ごとの更新推奨時期を、日本電機工業会の資料をもとに一覧にします。

目次

キュービクルの清掃の頻度はどう決めるか

内部の清掃は停電しないとできないので、年次点検と同じ日に行うのが基本です。月次点検では、内規の外観点検で汚損の有無を見ることになっています。月次で見つけた汚れの程度を記録しておき、年次の清掃にどれだけ時間を見ておくかを決めます。月次の見るところはキュービクルの月次点検の点検項目にまとめています。

年1回で足りるかどうかは設置環境で変わります。海岸近くで塩分が付く、工場の粉じんや油煙が入る、幹線道路沿いで排気の汚れが付く、換気口に虫や鳥の巣ができる、といった事業場は、月次の目視で汚れの進み方を見て、臨時の停電清掃を設置者に提案します。清掃の頻度を法令で定めた数値はありません。保安規程に清掃の定めがあればそれに従います。

キュービクルの清掃に使う道具

  • 乾いたウエス(糸くずの出にくいもの)と、碍子用の少し湿らせたウエス
  • 刷毛と、先の柔らかいブラシ
  • 掃除機(細いノズル付き。ほこりを吸い取る)
  • エアダスターまたはブロワー(掃除機と組で使う)
  • フィルターの交換品、換気口の防虫網の予備
  • 絶縁用保護具と検電器、短絡接地器具(清掃の前の停電作業に使う)

洗剤や溶剤は原則として使いません。使うとしても碍子やブッシングの絶縁面に残らないものを、製造者の案内の範囲で使います。

停電時の清掃手順

清掃は停電作業の一部です。停電、検電、短絡接地が済むまでは扉の中に手を入れません。停電操作の順序はキュービクルの停電作業の手順を見てください。

  1. 停電操作、検電、短絡接地を終えてから、扉を全開にして内部の写真を撮る。汚れの状態を清掃前の記録として残す
  2. 外箱の上面と換気口の外側から始める。屋根の落ち葉、換気口の虫や巣、扉の隙間のほこりを取る
  3. 換気口のフィルターを外して、ほこりを払うか交換する。防虫網の破れを見る
  4. 内部は上から下へ。母線の支持碍子、ブッシング、断路器や開閉器の碍子を、乾いたウエスと刷毛でほこりを落とす。油汚れや塩の付着は、少し湿らせたウエスで拭き、乾いたウエスで仕上げる
  5. 変圧器、コンデンサ、遮断器の外面と端子部のほこりを刷毛で落とし、掃除機で吸う。エアダスターを使うときは、吹き飛ばしたほこりを掃除機で受ける
  6. 床面とケーブルピットのほこり、虫の死骸、小動物の侵入跡を取る。ケーブル貫通部の隙間をふさぐ材料がはがれていないか見る
  7. 清掃で動かした部分のねじの緩み、碍子のひび、端子の変色を見て、年次点検の測定に進む
  8. 復電前に、ウエスや工具の置き忘れがないかを扉ごとに確認する

清掃の前後の写真は報告書に付けます。設置者には、汚れの原因(換気口の向き、周囲の工事、植栽)と、次回までにしてほしいこと(周囲の草刈り、フィルターの交換)を伝えます。

キュービクルの清掃でやってはいけないこと

  • 停電と検電、短絡接地が済む前に内部に手を入れること。清掃は作業時間が長く、慣れた人ほど省略しやすい
  • 水で洗い流すこと。碍子の隙間や機器の内部に水が残り、復電後の地絡の原因になる
  • 碍子やブッシングの絶縁面に溶剤や研磨剤を使うこと。表面の樹脂が傷み、汚れが付きやすくなる
  • エアダスターで機器の内部に向けてほこりを吹き込むこと。遮断器や継電器の内部に入ったほこりは取れない
  • 変圧器の放熱器やコンデンサの外箱を強く押したり、たたいたりすること。油入機器の油漏れ、コンデンサの膨れを広げる
  • 一人で作業すること。停電作業と同じく、監視する人を置く

機器ごとの更新推奨時期の目安

日本電機工業会(JEMA)は、汎用高圧機器の更新推奨時期を調査報告書で公表しています。2023年3月の改訂版の数値を表にします。報告書は、この年数は製造者が性能を保証する期間ではなく、通常の環境と保守のもとで、部品の経年劣化により新品に更新したほうが経済面を含めて有利になるとみられる時期だと説明しています。法令の基準ではありません。

機器更新推奨時期
高圧配電用変圧器20年
高圧交流遮断器20年、または規定の開閉回数
断路器20年、または手動は100回、電動は1,000回の開閉
高圧交流負荷開閉器屋内用15年、屋外用10年、または定格負荷開閉200回。GR付きの制御装置は10年
高圧限流ヒューズ屋内用15年、屋外用10年
高圧進相コンデンサ、直列リアクトル、放電コイル15年
計器用変成器15年
保護継電器15年
避雷器15年
高圧交流電磁接触器15年、または規定の開閉回数

報告書は、実際の寿命は使用条件、環境、保守の状態で大きく変わり、同じ型式でも長さが違うとしています。開閉器類の年数は、消耗部品を製造者の指示に従って交換していることが前提です。低圧の配線用遮断器や電磁開閉器はこの表の対象外で、製造者の案内で確認します。

年数のほかに、更新を急ぐ根拠になるのは測定値と外観です。絶縁抵抗の低下は絶縁抵抗測定の電圧と判定基準、高圧ケーブルは高圧ケーブルの劣化診断に判断の目安をまとめています。製造年の古い変圧器やコンデンサは、更新の前にキュービクルのPCB含有機器の確認方法でPCBの確認を済ませます。PCBが含まれていると、処分の方法と期限が変わります。

機器の更新を設置者にどう提案するか

提案は、年数、測定値、外観の3つを並べて、順番を付けて出します。

  1. 年次点検の報告書に、機器ごとの製造年と、JEMAの更新推奨時期を超えているかどうかの欄を作る
  2. 測定値の経年変化(絶縁抵抗、漏れ電流、温度)と外観の異常(油漏れ、膨れ、変色、さび)を機器ごとに書く
  3. 優先順位を付ける。保護装置(継電器、遮断器、負荷開閉器)は、壊れると事故が波及するので先にする
  4. 停電の機会をまとめる。年次点検の停電にあわせて更新すれば、停電回数が減る
  5. 更新の見積もりは工事業者から取ってもらい、技術者は仕様(容量、定格、PCB処分の要否)の確認役に回る

今年はこれ、来年はこれ、と年間計画の中に入れて示すと、設置者が予算を組みやすくなります。年間計画の作り方は年間点検計画表の作り方を見てください。

よくある質問

Q月次点検のときに扉を開けて中を清掃してもよいですか
A

充電中の内部には手を入れません。月次点検でできるのは、外箱の表面、換気口の外側、屋根の落ち葉の除去までです。内部の汚れは記録して、年次点検の停電時に清掃します。

Q更新推奨時期を過ぎた機器は、すぐに替えないといけませんか
A

更新推奨時期は法令の基準ではなく、業界団体が示す目安です。過ぎたからといって直ちに使えなくなるものではありません。年数を超えた機器は、測定値の変化と外観を毎回見て、異常が出たときにすぐ更新できるよう、設置者と見積もりを準備しておきます。

Q碍子の汚れはどこまで落とせばよいですか
A

目で見てほこりや塩の膜が残っていない状態が目安です。表面がざらついて落ちない汚れは、年次点検の絶縁抵抗の値とあわせて判断します。

清掃と更新の記録を電気保安DXの点検報告書に残す

電気保安DXは、iPhoneとiPadで使える電気管理技術者向けのアプリです。月次点検報告書は、事業場ごとに変圧器や点検項目を一度登録すれば、毎月は測定値と良否を入れるだけで、前回の値と差分が入力欄に出ます。漏れ電流や温度の変化を毎月追えるので、更新の提案の根拠になります。点検項目は事業場ごとに追加できるので、汚損の程度やフィルター交換の時期を項目として足せます。点検スケジュールと換算点数の自動計算は無料、報告書は1事業場まで無料です。

この記事の更新推奨時期は、一般社団法人日本電機工業会「汎用高圧機器の更新推奨時期に関する調査」報告書(改訂版、2023年3月)の内容をもとにしています。清掃の手順と頻度は一般的な実務の目安で、法令の基準ではありません。実際の点検内容は各事業場の保安規程によります。

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