月次点検報告書には、国が決めた統一の様式がありません。そのぶん、何を書けば足りるのかが分かりにくい書類です。この記事では、月次点検で確認する内容の根拠と、報告書に載せる項目、書き方のポイントを、高圧受電設備を例にまとめます。
月次点検報告書の役割
外部委託では、設置者が電気管理技術者から保安管理業務の結果について報告を受け、その記録を確認して保存することになっています。記録には、業務を行った電気管理技術者の氏名も含みます。月次点検報告書は、この報告と記録にあたる書類です。
様式は、保安規程と委託契約の内容に沿って各自で用意します。所属する協会の様式や、自治体の仕様書で指定された様式を使う場合もあります。
月次点検で確認すること
月次点検の内容は、経済産業省の「主任技術者制度の解釈及び運用(内規)」で示されています。設備が運転している状態で、次の3つを行います。
外観点検
- 電気工作物の異音、異臭、損傷、汚損などの有無
- 電線と他の物との離隔距離が適切か
- 機械器具や配線の取付け状態と、過熱の有無
- 接地線など保安装置の取付け状態
対象は、引込設備、受電設備、受配電盤、接地工事、受電室やキュービクルの外箱、発電設備、蓄電池設備、負荷設備です。
測定
- 電圧と負荷電流(電圧値が適切か、過負荷になっていないか)
- B種接地工事の接地線に流れる漏れ電流(低圧回路の絶縁状態)
問診
日常の巡視などで異常がなかったかを、設置者と従業員に聞き取ります。異常があった場合は、その内容を踏まえて点検します。
報告書に載せる項目
基本情報
- 事業場名
- 点検日と時刻
- 天候、気温、湿度
- 点検した電気管理技術者の氏名と印
- 設置者(立会者)の確認欄
電力量計の検針
- 検針日と指示値
- 前回からの使用電力量
- 最大需要電力
- 力率(計器がある場合)
測定値
- 変圧器ごとの電圧(R-S、S-T、T-R)
- 変圧器ごとの電流(R、S、T)
- 漏れ電流(Io)
- 変圧器やコンデンサの温度
外観点検の結果
設備ごとに「良」「否」で記録します。区分開閉器、ケーブル、断路器、遮断器、変圧器、コンデンサ、避雷器、受配電盤、接地線、キュービクルの外箱といった単位で並べると、設置者にも伝わりやすくなります。
発電設備や絶縁監視装置
非常用予備発電装置がある事業場は、始動と停止の試験結果や、発電電圧と周波数を記録します。絶縁監視装置がある事業場は、設定値の確認と、検知動作や伝送の試験結果を記録します。どこまで行うかは、保安規程の定めに合わせます。
所見と指摘事項
不良箇所、経過を見ている箇所、設置者への依頼事項を書きます。問診で聞いた内容も、ここに残します。
書き方のポイント
測定値は前回と並べて見る
電流や漏れ電流は、1回の値だけでは良し悪しを判断しにくい項目です。前回の値と比べて、増えているのか、季節による変動なのかを見ます。報告書の控えを前月分と並べるか、前回値を書く欄を作っておくと、変化に気づきやすくなります。
「否」には場所、状態、対応を書く
「否」とだけ書かれた報告書では、設置者は動けません。どこが、どういう状態で、いつまでに何をしてほしいのかを書きます。
- 書き方の例:キュービクル北面の扉パッキンが劣化し、雨水が入るおそれがあります。次回の年次点検までに交換をお願いします。
該当しない項目は空欄にしない
設備がない項目は、空欄のままにせず「−」などで埋めます。書き忘れなのか、該当なしなのかが、後から見て区別できます。
その日のうちに渡す
報告は早いほど意味があります。点検の当日に、その場で渡すか、PDFで送るのが理想です。現場のメモを車の中で清書している場合、この転記に時間がかかります。
記録の保存
報告書は、設置者が内容を確認して保存します。保存する期間は保安規程で定めます。電気管理技術者の側でも控えを残しておくと、前回値の確認や、設備の経年変化の把握に使えます。
iPhoneで入力して、その場でA4の報告書にする
iPhoneアプリの電気保安DXは、事業場ごとに変圧器や点検項目を一度登録しておけば、毎月は測定値と良否を入れるだけで、A4の月次点検報告書になります。前回の値と差分が入力欄に表示されるので、変化にその場で気づけます。天気と気温は自動で入り、印刷やPDFでの共有もその場でできます。報告書は1事業場まで無料で作れます。
この記事は、経済産業省の「主任技術者制度の解釈及び運用(内規)」の内容をもとに作成しています。点検の項目と記録の扱いは、事業場ごとの保安規程と委託契約書の定めが優先します。