キュービクル式高圧受電設備の月次点検で見る項目を、設備ごとの一覧表にまとめました。土台は、内規が示す外観点検・測定・問診の3区分です。区分開閉器から低圧の負荷設備まで何を見るか、測定値をどう読むか、見落としやすい点と所見の書き方を順に整理します。
キュービクルの月次点検項目は何で決まるか
月次点検の項目は、法令で1つずつ決まっているわけではありません。枠組みを示しているのは「主任技術者制度の解釈及び運用(内規)」で、実際の項目は各事業場の保安規程とその点検基準で決まります。
内規が示す月次点検は、設備が運転中の状態で行う次の3区分です。
- 外観点検:異音・異臭・損傷・汚損の有無、電線と他物との離隔距離、機械器具や配線の取付け状態と過熱の有無、接地線など保安装置の取付け状態
- 測定:電圧と負荷電流(電圧値の適否と過負荷)、B種接地工事の接地線に流れる漏れ電流(低圧回路の絶縁状態)
- 問診:設置者や従業員に、日常の巡視で異常がなかったかを聞く
外観点検の対象は、引込設備、受電設備、受配電盤、接地工事、受電室・キュービクル外箱、発電設備、蓄電池設備、負荷設備です。ある保安規程の例では、絶縁抵抗測定、接地抵抗測定、保護継電器試験は年次点検側に置かれ、月次では行いません。年次側の内容は年次点検の手順と試験項目にまとめています。
高圧受電設備の月次点検チェックリスト(設備別の点検項目)
運転中に、扉を開けた位置や保護板越しに見える範囲で確認する項目を設備ごとに並べます。これは一般的な着眼点の例です。受託先の保安規程の点検基準に合わせて、足し引きして使ってください。
| 設備 | 月次点検で見るところ |
|---|---|
| 区分開閉器(PAS・UGS) | 本体の錆・腐食、がいしやブッシングの割れ・汚損、リード線と他物の離隔、制御箱の施錠と表示灯・動作表示。UGSはガス圧表示があればその指示 |
| 引込ケーブル | 端末部の汚損・亀裂・放電痕、シースの損傷、支持金物のゆるみ、遮へい層の接地線の外れ、管路口やハンドホールの浸水 |
| 断路器 | 刃と受けの接触部の変色・過熱、がいしの汚損・割れ、投入が不完全でないか |
| 遮断器 | 外観の損傷・汚損、異音・異臭、開閉表示と表示灯 |
| 高圧負荷開閉器・電力ヒューズ | 接触部や端子の変色、消弧室・ヒューズ筒の汚損や亀裂、ヒューズの動作表示、相間バリアの外れ |
| 変圧器 | うなりの変化、異臭、油漏れと油面、温度計の指示、ブッシングの汚損・割れ、端子の過熱変色、外箱の錆 |
| 進相コンデンサ・直列リアクトル | 容器の膨らみ・変形、油漏れ、異音・振動、端子の変色、リアクトルの過熱や異臭 |
| 避雷器 | がいしの割れ・汚損、接地線の接続 |
| 計器用変成器(VT・CT・ZCT) | 本体の亀裂・変色・汚損、異音・異臭、二次配線の取付け |
| 受配電盤 | 計器の指示、表示灯、保護継電器の表示、盤内配線の取付け、端子の変色、異音・異臭、ほこりの堆積 |
| 接地線 | 断線や外れ、端子のゆるみ・腐食、接地端子箱の内外 |
| キュービクル外箱 | 錆・腐食、扉のパッキン、雨水の浸入跡や結露、換気口の目詰まり、ケーブル貫通部のすき間、小動物の侵入跡(ふん・巣・かじり跡)、施錠、高圧危険の表示、周囲の雑草や置き物 |
| 低圧の負荷設備 | 分電盤や開閉器の過熱・変色・異臭、配線の損傷、電動機の異音・振動、コンセントや照明器具の破損 |
非常用発電機、蓄電池、絶縁監視装置がある事業場では、その点検項目が加わります。
月次点検で測定する電圧・電流・漏れ電流・温度の見方
- 電圧:低圧側を相ごとに読みます。目安に使えるのは、電気事業法施行規則第38条が供給電圧として定める値で、標準電圧100Vは101±6V、200Vは202±20Vです。これは一般送配電事業者が供給地点で維持する値で、構内の判定基準そのものではありません。前月からの変化も見ます。
- 負荷電流:変圧器の定格電流と比べて過負荷でないか、相ごとの偏りが大きくないかを見ます。時間帯で値が変わるので、測定時刻も残します。
- 漏れ電流:B種接地線をクランプメーターで変圧器ごとに測ります。判定値は保安規程の定めによります。前月より増えていないかも併せて見ます。詳しくは漏れ電流の測定と判定の目安を参照してください。
- 温度:変圧器の温度計の指示と、端子や接続部を放射温度計で測った値です。同じ負荷条件での前回値や、他相との差で判断します。内規が月次の測定として挙げているのは電圧、負荷電流、漏れ電流で、温度を測定項目に入れるかは保安規程によります。
月次点検の問診で聞くこと
問診は、内規が挙げる月次点検の一部です。日常の巡視で異常がなかったかに加えて、ブレーカーが落ちた、漏電の警報が鳴った、機器から音やにおいがした、設備を増やした・移した、工事の予定がある、といった点を聞きます。異常の申し出があれば、その場所を点検に加えます。聞いた相手と内容は報告書に残します。
月次点検で見落としやすい点
- 目線より上と下。天井の雨染み、底板のケーブル貫通部のすき間、床のふんやかじり跡は、正面の機器だけ見ていると抜けます。
- 裏面や側面の扉。正面だけの点検が続くと、裏側の錆や浸水跡に気づけません。
- 柱上のPAS。近づけないので、双眼鏡で本体の錆、がいしの割れ、リード線の離隔を見ます。
- 負荷が軽い時間帯の点検。過熱やうなりが出にくいので、操業中や夏場の値と比べます。
- 前月と同じ「良」の連続。錆の広がりや油のにじみは、写真か寸法で残さないと変化を追えません。
関東東北産業保安監督部の集計では、令和7年度の管内の波及事故67件のうち、保守不備(自然劣化を含む)が47件でした。錆、浸水跡、小動物の侵入口といった外観の変化は、月次点検で拾える前兆です。
月次点検は運転中の点検です。中国四国産業保安監督部の事故事例には、月次点検で高圧部の保護板を外して漏れ電流を測ろうとし、感電した例があります。保護板は外さず、測れない箇所は所見に書いて停電時に回します。
月次点検の所見の書き方
所見は、設置者が読んで次に何をすればよいか分かるように書きます。次の順にすると、車内での清書でも迷いません。
- どこの何か(盤名、機器名、相)
- どういう状態か(大きさ、数値、前回からの変化)
- 考えられる原因と、放置した場合に起こること
- 設置者に頼む対応と時期(至急、次回停電時、経過観察)
例:「動力変圧器の低圧側T相端子に変色あり。他相より温度が高い。次回の停電時に増し締めと再確認を提案」。報告書全体の構成は月次点検報告書の書き方と記載項目で説明しています。
よくある質問
- Q月次点検の項目は法令で決まっていますか
- A
個々の項目までは決まっていません。内規が外観点検・測定・問診の枠組みを示し、具体的な項目は事業場ごとの保安規程で定めます。受託先ごとに点検基準を確認してください。
- Q月次点検で絶縁抵抗測定は必要ですか
- A
保安規程によります。ある保安規程の例では、絶縁抵抗測定、接地抵抗測定、保護継電器試験は年次点検側です。月次は外観点検と、電圧・電流・漏れ電流の測定です。
- Q隔月点検にすると点検項目は減りますか
- A
減りません。変わるのは頻度で、1回の点検で見る項目は保安規程で定めた月次点検のままです。隔月や3か月に1回にできる条件は平成15年経済産業省告示第249号で決まっています。月次点検を隔月や3か月に1回にできる条件で確認できます。
月次点検の記録を電気保安DXでまとめる
iPhoneとiPadで使えるアプリ「電気保安DX」には、キュービクル用の月次点検報告書テンプレートがあります。事業場ごとに変圧器と点検項目を一度登録すれば、毎月は測定値と良否を入れるだけでA4の報告書になり、印刷とPDF共有ができます。点検項目は事業場ごとに追加・削除・並び替えができ、入力欄には前回の値と差分が出ます。報告書は1事業場まで無料で、Pro(月額2,980円)にすると全事業場で使えます。
この記事は、経済産業省「主任技術者制度の解釈及び運用(内規)」、平成15年経済産業省告示第249号、電気事業法施行規則、日本電機工業会の保守点検資料、産業保安監督部の事故資料をもとに作成しています。実際の点検項目と判定値は、各事業場の保安規程に従ってください。