電気管理技術者として独立したあとの収入は、受託件数と1件あたりの単価の積で決まります。受託件数には換算点数の合計33点未満という上限があるので、収入にも天井があります。この記事では、収入の構造と、独立後に収入が伸びない人に共通する5つの原因、その対策を書きます。年収の金額は出典のある幅だけを示します。
電気管理技術者の年収はどう決まるか
収入の計算は単純です。受け持つ事業場ごとの月額の保安管理料を足し、年次点検などの別料金を加えたものが年間の売上です。そこから車、測定器、保険、協会の会費などの経費を引いた残りが所得になります。
受託件数は好きなだけ増やせません。外部委託で受け持てる事業場は、件数ではなく換算点数の合計で決まり、合計が33点未満であることが要件です。経済産業省が2020年に示した資料では、33点の上限で受託できる事業場は一般に50〜60か所程度とされています。点数の計算は換算点数の計算方法と早見表にまとめています。事業場ごとの点数は換算点数の計算ツールでその場で出せます。
単価には法令の基準がありません。設置者との契約で決まります。設備容量、点検頻度、非常用発電機の有無、移動距離で変わり、同じ33点でも単価の組み合わせで売上は大きく違います。年収の目安として、民間の開業支援サイトの解説記事では、独立した電気主任技術者の年収はおおむね600万〜1,000万円、小規模なキュービクル1台の事業場の月額は2万〜4万円程度とされています。これは調査にもとづく統計ではなく記事の目安なので、その前提で読んでください。
電気管理技術者が独立して失敗しやすい5つの点
独立してからの失敗は、技術ではなく受託と運営の問題で起きることがほとんどです。多い順に並べます。
| 失敗しやすい点 | 起きること |
|---|---|
| 受託が増えない | 最初の数件から先が伸びず、固定費だけが出ていく |
| 単価が安い | 件数は多いのに売上が伸びず、点数の上限に先に届く |
| 移動が多すぎる | 事業場が散らばり、月次点検の日数と燃料代が増える |
| 年次点検の人手がない | 停電作業を1人で回せず、外注費が増えるか日程が組めない |
| 事故対応の負担 | 夜間や休日の呼び出しに1人で応じ続け、体力と信用を消耗する |
受託が増えない
独立直後は実績がなく、設置者から直接声がかかることはまずありません。受託の入口は、協会や保安法人からの紹介、知人の電気工事業者からの紹介、退職した会社の取引先の順に多いのが実態です。入口を1つに絞ると、そこが止まったときに受託が止まります。独立前に、紹介元を2つ以上作っておくことが対策です。独立までの流れは電気管理技術者として独立する手順と費用に書いています。
単価が安い
最初の受託は単価を下げて取りがちです。下げた単価は上げにくく、紹介で広がるときも同じ水準で広がります。換算点数の上限がある以上、安い事業場で点数を埋めると、あとから条件のよい依頼が来ても受けられません。単価を決めるときは、移動時間を含めた1件あたりの所要時間で見ます。月額に年次点検や事故対応が含まれるのか、別料金なのかを契約書に書き分けておくことも、あとで揉めないための対策です。
移動が多すぎる
紹介のたびに遠い事業場を受けていると、受け持ち全体が広がります。外部委託の要件には、事業場に一定の時間内で到達できることが含まれるので、遠い事業場は受けられる範囲に限りがあります。範囲内でも、1日に回れる件数が減れば売上の上限が下がります。受け持ちの中心を決め、そこから離れた依頼は単価に移動分を乗せるか、断ることが対策です。絶縁監視装置を付けて隔月点検にできる事業場なら、移動回数を減らせます。条件は月次点検を隔月や3か月に1回にできる条件を見てください。
年次点検の人手がない
停電を伴う年次点検は、操作と監視、測定を分けるために複数人で行うのが普通です。1人で独立すると、この人手を毎回どこかから借りることになります。同じ地域の技術者と相互に手伝う約束を作る、協会の年次点検の応援体制を使う、継電器試験装置や耐圧試験装置は借用でまかなう、といった方法があります。年次点検の時期が特定の月に集中すると、応援も集中して頼めなくなるので、年間の計画で分散させます。計画の組み方は年間点検計画表の作り方に書いています。
事故対応の負担
停電や漏電の連絡は夜間や休日にも来ます。受託件数が増えるほど呼び出しの回数も増え、1人で全部に応じていると、旅行にも体調不良にも対応できなくなります。代行者を決めて設置者に伝えておくこと、事故時の連絡の流れを契約の段階で決めておくことが対策です。賠償責任保険への加入も、独立前に済ませておきます。事故後の報告の流れは電気事故報告の流れにまとめています。
収入を安定させるための考え方
33点の上限を前提に、点数あたりの売上を上げる方向で考えます。やることは3つです。
- 受け持ちの地域を決め、その中で件数を増やす。遠い事業場は単価に移動分を乗せる
- 年次点検、改修の立会い、絶縁監視装置の提案など、月額以外の売上を契約に書き入れる
- 単価の低い事業場は契約更新のときに見直し、断る基準を決めておく
外部委託の制度は主任技術者の選任形態の9割を占め、受け持つ技術者の高齢化が進んでいます。保安管理業務講習の受講者は20〜30代が約6割で、若い参入者も増えています。経験のある技術者が引退するときの引き継ぎ先として声がかかることもあるので、同業者とのつながりは独立後も切らさないほうが得です。
よくある質問
- Q電気管理技術者は独立すると稼げないと聞きますが本当ですか
- A
受託が少ない時期は固定費が先に出るので、独立直後に収入が少ないのは普通です。受託が33点に近づけば、売上は単価の組み合わせで決まります。稼げないかどうかは、件数より単価と移動の設計で決まります。
- Q仕事がない状態から抜け出す方法はありますか
- A
紹介元を増やすのが先です。協会や保安法人への登録、電気工事業者とのつながり、前職の取引先への連絡を同時に進めます。1つの入口に絞ると止まりやすくなります。
- Q協会に入ると年収は上がりますか
- A
協会は受託の紹介や年次点検の応援、事故時の代行で助けになりますが、単価を決めるのは設置者との契約です。入会金や会費は協会ごとに違うので、紹介の見込みと費用を比べて決めてください。
受け持ちが増えたあとの点検管理を電気保安DXで回す
電気保安DXは、iPhoneとiPadで使える電気管理技術者向けのアプリです。事業場を登録すると換算点数の合計が自動で出るので、新しい依頼を受けられるかをその場で確かめられます。月次と年次の予定、今月回る事業場の一覧、未実施の事業場の地図表示は無料です。月次点検報告書は1事業場まで無料で、全事業場で作る場合はPro(月額2,980円)です。
この記事は、平成15年経済産業省告示第249号と、経済産業省が公表している電気保安人材に関する資料をもとに作成しています。年収と単価の目安は民間の解説記事によるもので、統計ではありません。