電気管理技術者として独立する手順と費用 要件の確認から最初の受託まで

電気管理技術者として独立するには、要件の確認、協会に入るか単独かの判断、開業の準備、最初の受託、外部委託承認申請の順に進めます。この記事では、告示と産業保安監督部の公開資料をもとに、高圧の需要家を外部委託で受け持つ個人として開業するまでの手順と、費用の内訳を整理します。

目次

電気管理技術者の独立に必要な要件

電気管理技術者は資格の名前ではありません。電気事業法施行規則第52条の2と平成15年経済産業省告示第249号の要件を満たす個人が、事業場ごとの外部委託承認を受けて初めて業務ができます。先に確かめるのは、免状と実務経験、専任、機械器具の3つです。

免状と条件必要な実務経験
第一種電気主任技術者3年
第二種電気主任技術者4年
第三種電気主任技術者5年
第二種または第三種で、保安管理業務に関する講習を修了3年
第二種または第三種で講習と訓練を修了、または第一種で訓練を修了2年

実務経験は通算で数えます。免状の交付前の期間は2分の1に換算します。受け持つのが設備容量300kVA以下でPF・S形のキュービクルに限られる場合は、上の年数から1年を引けます。証明は実務経歴証明書で行い、書き方は実務経験証明書の書き方にまとめています。

他に職業を持つ場合は、保安管理業務の遂行に支障がないかが厳格に審査されます。九州産業保安監督部の必要書類には「他に職業を有していないことの説明書」が入っています。会社員のまま副業で始める形は、まず認められないと考えておきます。要件の全体は電気管理技術者の外部委託の要件を見てください。

保有していなければならない機械器具

告示第2条で、絶縁抵抗計、電流計、電圧計、低圧検電器、高圧検電器、接地抵抗計、騒音計、振動計、回転計、継電器試験装置、絶縁耐力試験装置の11品目を定めています。継電器試験装置と絶縁耐力試験装置は、協会や保安法人などから借りる契約があれば、試験装置貸出承諾書を添えて自分で持たなくてよいことになっています。買うものと借りるものの選び方は電気管理技術者の道具と測定器にまとめています。

協会に入るか単独でやるか

各地に電気管理技術者の協会があり、入会すると年次点検の応援、事故や急病のときの代務、試験装置の貸し出し、講習や事業場の紹介を受けられるのが一般的です。単独で始めると、年次点検の人手と試験装置を自分で手配し、緊急時の連絡体制も自分で作ります。

協会に入る単独でやる
年次点検の人手会員同士で応援し合う知人や業者に都度頼む
試験装置協会の貸し出しを使える自分で買うか、レンタルの契約をする
緊急時の代務協会の体制に入る自分で代務者を見つける
費用入会金と会費がかかる。額は協会ごとに違う会費はないが、装置と人手の費用を自分で持つ

入会の条件、入会金、会費、応援の仕組みは協会ごとに違います。開業予定地の協会に直接問い合わせて確かめます。

開業の手続きと準備するもの

  1. 税務署に個人事業の開業届を出す。開業から1か月以内。青色申告をするなら承認申請もあわせて出す
  2. 事務所の所在地を決める。自宅でよい。外部委託承認申請では、この連絡場所から事業場まで2時間以内に到達できることが条件になる
  3. 車を用意する。測定器と工具、モバイルプリンターを積み、報告書を車の中で作って印刷する人が多い
  4. 測定器をそろえる。告示の11品目のうち、借りるものは貸出承諾書を取る
  5. 保険に入る。点検中の事故で設備や第三者に損害を与えたときの賠償責任保険は、協会経由で入れる場合がある
  6. 緊急時の連絡体制を書面にする。自分の連絡先、不在時の代務者、2時間以内に向かえる範囲を決める

独立の初期費用の内訳

独立に要る金額は、何を買い、何を借りるかで大きく変わります。確認できる公的な金額はないので、ここでは項目と考え方だけを示します。

項目考え方
測定器と工具月次点検で毎回使う絶縁抵抗計、クランプメーター、検電器は自分のものを持つ。継電器試験装置と絶縁耐力試験装置は借りる人が多い
車中古でよい。高圧の電気室がある地下駐車場に入る高さと、測定器を積める荷室で選ぶ
協会の入会金と会費協会ごとに違う。入会前に確かめる
保険賠償責任保険のほか、国民健康保険と国民年金への切り替え分が固定費として増える
事務所自宅なら家賃は増えない。モバイルプリンター、用紙、通信費がかかる
運転資金受託件数が増えるまでの生活費。受託は承認申請を経て始まるので、独立直後は収入がない期間がある

受け持てる事業場の数には上限があります。換算点数の合計が33点未満で、点数は事業場の設備容量で決まります。収入の上限が先に決まる仕事なので、固定費をどこまで抑えるかが計画の中心になります。計算は換算点数の計算方法と早見表、収入の構造は独立で失敗しやすい点と年収の決まり方を見てください。事業場ごとの点数は換算点数の計算ツールでその場で出せます。

最初の受託をどう取るか

独立直後の受託は、紹介から始まるのが普通です。入り口は次のどれかです。

  • 協会からの紹介。引退する会員の事業場を引き継ぐ形が多い
  • 保安法人からの委託先変更。法人が手放す事業場や、地域的に法人が回りにくい事業場
  • 前職の取引先や知人。電気工事業者、設備管理会社、設計事務所からの紹介
  • 設置者への直接の営業。新設の事業場は、電力会社の申し込みの段階で工事業者が主任技術者の手配を聞かれる

受託が決まったら、設置者と委託契約を結びます。契約書には、点検頻度、緊急時の連絡方法、費用、契約期間を書きます。協会に入っていれば、契約書のひな形を使えます。

外部委託承認申請の流れ

申請者は設置者で、提出先は所管の産業保安監督部です。電気管理技術者は書類をそろえて代行することが多く、代行する場合は設置者との関係が分かる資料(同意書など)を付けます。

  1. 設置者と保安管理業務の委託契約を結ぶ
  2. 事業場の保安規程を作る。委託先の変更なら変更届になる
  3. 外部委託承認申請書と添付書類をそろえる。個人の場合は、免状の写し、実務経歴証明書、他に職業を有していないことの説明書、機械器具保有状況届出書、試験装置貸出承諾書、緊急時の連絡体制の説明書、他の委託先事業場の一覧など
  4. 隔月や3か月に1回の点検にする事業場は設備条件確認書を付ける。絶縁監視装置を使う場合は設備調査表と応動に関する説明書を付ける
  5. 保安ネットで電子申請し、続けて保安規程の届出を入力する
  6. 審査が終わると承認書を出力できる。承認後に業務を始める

2件目以降は、前回から変わっていない書類を省略できます。手続きの詳細は外部委託承認申請の手順と必要書類にまとめています。

よくある質問

Q会社員のまま副業で電気管理技術者を始められますか
A

原則として難しいです。個人で外部委託を受けるには、他に職業を持つかどうかの説明書を申請に添え、持つ場合は業務の遂行に支障がないかを厳格に審査されます。会社に在籍したまま受託する形は、まず認められないと考えてください。

Q第三種電気主任技術者で実務経験が3年しかない場合はどうなりますか
A

原則は5年です。保安管理業務に関する講習を修了すれば3年になり、講習と訓練の両方を修了すれば2年になります。講習と訓練の内容と実施機関は経済産業省の案内で確認してください。

Q測定器は全部そろえないと申請できませんか
A

告示の11品目は保有が要件ですが、継電器試験装置や絶縁耐力試験装置のように、貸し出しの契約があるものは貸出承諾書で代えられます。設置者が備え付けている機器についても免除の定めがあります。月次点検で使う測定器は自分で持ちます。

独立後の点検スケジュールを電気保安DXで管理する

電気保安DXは、iPhoneとiPadで使える電気管理技術者向けのアプリです。受託した事業場を登録すると、月次と年次の予定、年間表、今月回る事業場の一覧を見られ、未実施の事業場は地図に出ます。換算点数の自動計算も無料なので、新しい依頼を受ける前に33点未満に収まるかをその場で確かめられます。月次点検報告書は1事業場まで無料で、全事業場で作る場合はPro(月額2,980円)です。

この記事は、平成15年経済産業省告示第249号(令和6年11月15日施行の改正まで)と、九州産業保安監督部・関東東北産業保安監督部が公開する外部委託承認申請の必要書類と電子申請の案内をもとに作成しています。協会の入会条件や費用は各協会で確認してください。

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