キュービクルのPCB含有機器は、銘板の製造年と製造者を見れば、確認が要るかどうかの当たりがつきます。この記事では、高濃度と低濃度の違い、対象になる機器、銘板の見方、製造者への照会と絶縁油の分析、PCBと分かったときの届出、処分期限を、電気管理技術者が年次点検で確認する順番でまとめます。
PCBの高濃度と低濃度の違い
区分は絶縁油のPCB濃度で決まります。絶縁油中のPCBが0.5mg/kgを超えていればPCB含有です。そのうち5,000mg/kg(重量比0.5%)を超えるものが高濃度、5,000mg/kg以下のものが低濃度です。
高濃度は、昭和47年ごろまでに国内で製造された機器に、絶縁油として意図的にPCBを使ったものです。低濃度は、PCBを使っていないはずの機器の絶縁油が、製造工程などでわずかに汚染されていたものです。高濃度は銘板で判別できますが、低濃度は原則として絶縁油を採って分析しないと分かりません。
PCBの確認が必要な機器
電気事業法の告示で定められたPCB含有電気工作物の対象は、次の12品目です。
| 区分 | 機器 |
|---|---|
| 高濃度にも低濃度にもなりうる | 変圧器、電力用コンデンサー、計器用変成器、リアクトル、放電コイル |
| 主に低濃度の確認対象 | 電圧調整器、整流器、開閉器、遮断器、中性点抵抗器、避雷器、OFケーブル |
キュービクルで実際に見るのは、変圧器、高圧進相コンデンサ、直列リアクトル、放電コイル、計器用変成器(VT・CT・VCT)、油入の遮断器や開閉器です。
銘板で製造年と製造者を確認する
最初にすることは銘板の写真を撮ることです。製造者名、型式、製造番号、製造年月を読み取ります。製造年で、確認の優先度を分けます。
| 機器 | 製造年の目安 | 見るところ |
|---|---|---|
| 変圧器(高濃度) | 昭和28年から昭和47年に国内で製造 | 製造者名と型式を経済産業省の内規の別表と照合する |
| 変圧器など絶縁油を交換できる機器(低濃度) | 平成5年以前の製造は確認の対象 | 平成6年以降の出荷は汚染の可能性がないとされる。ただし絶縁油の入れ替えや補充の履歴があれば別 |
| コンデンサなど封じ切りの機器(低濃度) | 平成2年以前の製造は確認の対象 | 平成3年以降の製造でも、一部の製造者の高圧コンデンサは測定が勧められている |
製造年の目安は環境省の低濃度PCB廃棄物早期処理情報サイトの記載によります。目安であって、年式だけで白黒をつけるものではありません。製造者の案内で例外が出ている型式もあるので、次の照会とあわせて判断します。
銘板が読めないときは、設備台帳や過去の点検記録、更新工事の記録を当たります。記録で製造年と製造者が確かめられれば、現場での目視を省略してよいとされています。
製造者への照会と絶縁油の分析
各製造者は、自社製品のPCB混入の可能性を型式と製造年の範囲で公表しています。銘板の情報をもとに、製造者の案内ページや問い合わせ窓口で確認します。海外製の機器は、製造者に聞けないことが多いので、環境省や自治体の相談窓口に照会します。
製造者の情報で可能性が残る機器は、絶縁油を採って分析機関に出します。採油は停電して行うので、年次点検の停電にあわせます。封じ切りのコンデンサは採油できないものがあり、開封すると使えなくなります。この場合は、分析せずに低濃度PCB含有として処分する判断もあります。処分費と分析費を並べて設置者に示します。
PCB含有と分かったときの届出
使用中の電気工作物がPCB含有と分かったら、電気関係報告規則第4条の2に基づき、設置者が所管の産業保安監督部に届け出ます。届出は次の場面ごとに様式が分かれています。
| 場面 | 時期 |
|---|---|
| PCB含有電気工作物であることが判明した | 判明後遅滞なく |
| 氏名、事業場名、使用状態などの届出事項が変わった | 変更後遅滞なく |
| 電路から外して廃止した | 廃止後遅滞なく |
| 絶縁油が漏れた | 事故後できる限り速やかに |
電路から外して保管している機器にPCBが見つかった場合は、電気事業法の届出ではなく、PCB特措法に基づく都道府県や政令市への届出になります。使用中の機器も、廃棄したあとは特措法の届出が要ります。届出の書き方は産業保安監督部の記載例が公開されています。
PCBの処分期限
高濃度PCB廃棄物の処分期間は、地域と機器の種類ごとに平成30年3月末から令和5年3月末の間で終わっています。期限を過ぎた高濃度の機器が見つかっても処分の義務はなくなりません。見つけたら、すぐに設置者と自治体に相談します。
低濃度PCB廃棄物の処分期間は令和9年3月31日までです。使用中の低濃度PCB含有機器も、この日までに使用をやめて処分する必要があります。
令和8年4月に改正PCB特措法の法案が閣議決定され、国会に提出されました。施行は一部を除き令和9年4月1日の予定です。改正後は、低濃度PCB使用製品の所有者に都道府県知事への届出と管理基準の遵守が求められ、使用を終えた製品や新たに判明した廃棄物は、政令で定める期間内に処分する仕組みになります。令和9年3月31日までの処分義務は、保管している低濃度PCB廃棄物に対するもので、改正案の使用製品の扱いとは別です。法律の成立と公布の状況、政令の内容は、環境省のPCB早期処理情報サイトで確認してください。
年次点検でPCBを確認する位置づけ
外部委託の事業場では、PCB含有機器の確認は月次点検の記録確認と、年次点検の現場確認で行います。月次点検で銘板を読みに充電部へ近づくことはしません。銘板の写真は停電した年次点検のときに撮り、記録と照合するのは月次の事務でできます。手順は年次点検の手順と試験項目とキュービクルの停電作業の手順を見てください。
確認作業は設置者と日程を合わせて、必ず電気管理技術者が立ち会います。過去には、委託先との日程より前に設置者の従業員が一人でキュービクルを開け、高圧開閉器のヒューズ部に触れて電撃傷を負った事例が公的資料で紹介されています。設置者には、PCBの確認のためでも一人で扉を開けないよう伝えます。
確認が済んだ機器は、点検記録に製造年と根拠(製造者の回答、分析結果)を残します。設置者や委託先が変わったときに、同じ確認を繰り返さずに済みます。古い機器の更新時期の目安はキュービクルの清掃と機器の更新目安にまとめています。
よくある質問
- Q平成6年以降に製造された変圧器なら分析は不要ですか
- A
絶縁油を交換できる変圧器は、平成6年以降の出荷であれば汚染の可能性がないとされています。ただし、絶縁油の入れ替えや補充をした履歴があれば、その油が汚染源になりえます。履歴がはっきりしないときは分析を勧めます。
- Q低濃度PCBの機器は令和9年3月31日まで使い続けてよいですか
- A
処分期間が令和9年3月31日までなので、その日までに使用を終えて処分する前提で計画します。処分には収集運搬と無害化処理の手配が要り、年度末は混み合います。停電をともなう機器の取り外しは、年次点検や更新工事にあわせて前倒しで組みます。
- QPCB含有と分かった機器の届出は誰が出しますか
- A
電気関係報告規則の届出は設置者が所管の産業保安監督部に出します。電気管理技術者は銘板の情報、設置年月、個数などを整理して設置者に渡し、必要に応じて作成を手伝います。保管中の機器のPCB特措法の届出は、都道府県や政令市の廃棄物担当課に出します。
PCBの確認結果を電気保安DXの点検記録に残す
電気保安DXは、iPhoneとiPadで使える電気管理技術者向けのアプリです。月次点検報告書は事業場ごとに変圧器や点検項目を一度登録すれば、毎月は測定値と良否を入れるだけで、点検項目は事業場ごとに追加できます。PCBの確認が済んだ機器を項目として足しておけば、設置者に渡す報告書で確認済みであることを毎月示せます。点検スケジュールと換算点数の自動計算は無料で、報告書は1事業場まで無料です。
この記事は、環境省のPCB早期処理情報サイトと低濃度PCB廃棄物早期処理情報サイト、環境省の報道発表、産業保安監督部が公開するPCB含有電気工作物の届出資料と記載例の内容をもとに作成しています。処分期限や届出の要否は変わることがあるため、最新の内容は環境省と所管の産業保安監督部で確認してください。