高圧受電設備の保護継電器試験は、年次点検で1年に1回以上、停電して行うのが原則です。過電流継電器(OCR)は動作電流、動作時間、瞬時要素を、地絡継電器(GR・DGR)は動作電流、動作時間、位相特性を測り、最後に遮断器との連動を確かめます。この記事では、周期、手順、試験器の用意、判定の考え方、記録の残し方をまとめます。
保護継電器試験の周期 年次点検で1年に1回以上
外部委託の事業場では、「主任技術者制度の解釈及び運用(内規)」が年次点検の項目として、保護継電器の動作特性試験と、保護継電器と遮断器の連動動作試験の結果が正常であることの確認を求めています。年次点検は1年に1回以上なので、継電器試験もこの周期です。全体の流れは年次点検の手順と試験項目を参照してください。
無停電年次点検の年は、前回の停電時の試験結果を確認する方法が経済産業省の例示に挙がっています。それでも3年に1回は停電して試験します。月次点検では外観、動作表示、整定値が変わっていないことを見るにとどめます。実際の項目と周期は各事業場の保安規程の定めによります。
過電流継電器(OCR)の試験方法
始める前に、整定表と継電器のタップやディップスイッチが一致していること、CT比、遮断器の引外し方式(電圧引外しかコンデンサ引外しか)、試験端子の有無、試験器の電源の位置を確認します。整定値は電力会社側との保護協調で決めた値なので、根拠なく変えません。試験の順序は製造者の取扱説明書に合わせます。
- 主回路の停電と短絡接地を確認し、試験器を継電器の電流入力につなぐ。CTの二次側が開放にならないよう、試験端子がない盤では先に短絡する。
- 限時要素の動作電流を測る。電流をゆっくり上げ、始動表示が出たときの値を読む。
- 限時要素の動作時間を測る。整定電流の300%と700%を急に流し、動作までの時間を読む。整定を変えて試験したら必ず元に戻す。
- 瞬時要素の動作電流を測る。限時要素をロックして電流を素早く上げ、動作した値を読む。瞬時の動作時間は瞬時整定値の200%などを急に流して測る。
- 動作表示器を復帰させ、整定を元に戻し、配線を外す。
地絡継電器(GR・DGR)の試験方法と連動試験
GRは零相電流だけで判定し、DGRは零相電流と零相電圧の位相で方向を判定します。試験電流はZCTの一次側に試験線を通すか、試験端子から入れます。
- GR:動作電流試験。電流をゆっくり上げ、動作した値を読む。各整定タップで行う。
- GR:動作時間試験。整定電流の130%と400%を急に流し、動作時間を読む。
- DGR:動作電圧試験。整定電流の150%を流した状態で零相電圧をゆっくり上げ、動作した値を読む。
- DGR:動作電流試験。整定電圧の150%を加えた状態で、位相0°で電流をゆっくり上げ、動作した値を読む。
- DGR:位相特性試験。電圧と十分な電流を加え、電流の位相を進み側と遅れ側に動かして動作する範囲を読む。
- DGR:動作時間試験。電圧と電流を同時に急に加え、動作時間を読む。
区分開閉器(PAS、UGS)の地絡継電器も同じ考え方で、制御装置の試験端子から試験量を入れ、開閉器が開放することまで確かめます。
連動試験は、継電器の接点から引外しコイル、遮断器が実際に開くまでを一つの回路として確かめます。継電器単体で合格していても、引外しコイルの断線、補助接点の不良、制御電源の不足で遮断器が開かないことがあります。OCR、GR、DGRそれぞれの試験電流で継電器を動作させ、遮断器または区分開閉器が開くこと、動作表示と警報が出ることを見ます。コンデンサ引外し装置は充電電圧も確認します。
判定の考え方 法令の数値ではなく整定値と製造者の許容範囲
内規は「結果が正常であること」とだけ定めていて、合否の数値は法令にありません。判定は、整定値に対して製造者が示す許容範囲に入っているかで行います。次の表は、静止形継電器の取扱説明書に載っている判定値の一例です。製品ごとに違うので、実際の判定は試験する継電器の資料を使ってください。
| 試験項目 | 判定値の一例(製造者資料) | 備考 |
|---|---|---|
| OCR 限時動作電流 | 整定値の±10%以内 | 仕様上の精度は±5% |
| OCR 限時動作時間 | 300%で±17%以内、700%で±12%以内 | 時間整定10の基準値に対して |
| OCR 瞬時動作電流 | 整定値の±15%以内 | 仕様上の精度は±7% |
| OCR 瞬時動作時間 | 200%入力で50ms以下 | |
| GR 動作電流 | 整定値の±10%以内 | ZCTと組み合わせた値 |
| GR 動作時間 | 130%で0.1〜0.3秒、400%で0.1〜0.2秒 | |
| DGR 動作電圧 | 整定値の±25%以内 | ZPDと組み合わせた値 |
| DGR 位相特性 | 整定値±20°以内 | 遅れ側、進み側とも |
仕様上の精度より現場試験の判定値のほうが広く書かれているのは、試験器の誤差や温度の影響を見込むためです。誘導形の古い継電器は、製造者の試験成績書の値や前回までの試験値との差で判断します。
試験器の種類とレンタル
- 過電流継電器試験器。限時要素と瞬時要素に必要な大電流を出せ、電流の急投入と時間計測ができるもの。
- 地絡継電器試験器。零相電流と零相電圧を出し、位相を変えられるもの。DGRの位相特性試験に要る。
- 複合形の継電器試験器。OCR、GR、DGRなどを1台で試験できる。重量と電源容量を確認する。
- 連動試験用の配線、CT二次短絡用の短絡片、試験端子のアダプタ。
年次点検が年に数日しかない人は、測定器のレンタル会社から借りる方法があります。校正の記録が付くか、試験する継電器の形式に対応するかを確かめます。毎月のように使うなら購入のほうが安くなります。道具のそろえ方は電気管理技術者の道具と測定器にまとめています。
記録の残し方とよくある不良
試験記録は継電器ごとの一覧にしておくと翌年の比較が楽です。形式と製造年、設置場所、整定値、各試験の測定値と判定、判定に使った許容範囲、連動試験の結果、試験器の名称と校正年月、天候と気温、試験者を残します。許容範囲内でも前年から大きく動いた継電器は要注意と書きます。年次点検の月の決め方は年間点検計画表の作り方を見てください。
- 動作時間が範囲に入らない。誘導形は円板の汚れや軸受の摩耗が多い。静止形は製造者に交換を相談する。
- 動作電流が出ない、ばらつく。試験配線の接触不良、CT二次の短絡片の外し忘れを先に疑う。
- 継電器は動作したが遮断器が開かない。引外しコイルの断線、補助接点、コンデンサ引外し装置の容量低下を調べる。
- DGRの動作電圧が出ない。ZPDの不良か、ZPDに接続する継電器台数の設定違い。
- 整定値が記録と違う。前回以降に誰かが触った可能性がある。設置者に確認し、整定表に合わせて戻す。
よくある質問
- Q保護継電器試験の判定基準は法令で決まっていますか
- A
決まっていません。内規は動作特性試験と連動動作試験の結果が正常であることを求めるだけです。整定値に対して製造者が示す許容範囲で判定し、使った判定値を記録に残します。
- Q無停電年次点検の年は継電器試験をしなくてよいですか
- A
経済産業省の例示では、無停電の年は前回の停電時の動作特性試験や引外し回路の測定結果を確認する方法が挙がっています。3年に1回は停電して試験します。条件は月次点検を隔月や3か月に1回にできる条件と年次点検の記事を参照してください。
- Q継電器試験は一人でできますか
- A
試験器の操作と遮断器の動作確認を一人で同時に行うと見落としが出ます。連動試験と区分開閉器の操作は補助者を頼む人が多いです。
年次点検の予定と結果を電気保安DXで管理する
電気保安DXは、電気管理技術者向けのiPhone、iPad向けアプリです。事業場ごとに月次点検と年次点検の予定を登録でき、年間表で継電器試験を行う月を確認できます。予定管理と換算点数の自動計算は無料です。月次点検報告書は、変圧器や点検項目を一度登録すれば毎月は測定値と良否を入れるだけで、1事業場まで無料、Pro(月額2,980円)で全事業場に使えます。
この記事は、経済産業省「主任技術者制度の解釈及び運用(内規)」の年次点検の項目と、静止形保護継電器の製造者が公開している取扱説明書の試験方法・判定値をもとに作成しています。判定値は製品ごとに異なります。実際の試験方法と判定は、試験する継電器の製造者資料と各事業場の保安規程に従ってください。