高圧ケーブルの劣化診断の方法と判定、更新の目安 水トリーと事故の傾向

高圧CVケーブルの劣化は、水トリー、熱、外傷が主な原因です。診断は、停電して行う絶縁抵抗測定と直流漏れ電流法、停電せずに行う活線診断に分かれ、判定値は法令ではなく業界資料や診断機関の基準によります。この記事では、劣化の仕組み、事故が増える年数、診断方法と判定の考え方、更新の目安、月次と年次で見るところをまとめます。

目次

高圧CVケーブルの劣化要因 水トリー、熱、外傷

水トリーは、架橋ポリエチレンの絶縁体に、水分と電界の影響で生じる樹枝状の微小な亀裂です。外部半導電層側から導体に向かって伸びるものは外導トリーと呼ばれます。長い年月をかけて成長し、絶縁体を橋絡すると絶縁破壊に至ります。地中管路やハンドホールの中など、水の影響がある場所で進みやすい劣化です。

外部半導電層の構造には、テープ巻きのE-Tタイプと、押出成形で絶縁体と一体にしたE-Eタイプがあります。水トリーへの耐性はE-Eタイプのほうが高く、経済産業省の注意喚起でも水の影響がある場所ではE-Eタイプが勧められています。

熱による劣化は、過負荷や高い周囲温度、端末部の接触不良で絶縁体やシースが硬化、変色するものです。外傷は、工事での切断のほか、シースの傷から浸水して水トリーの入口になるものがあります。

高圧ケーブルの事故は何年で増えるか 製造後20年と15年未満の事故

関東東北産業保安監督部の波及事故防止の資料では、関東地域の波及事故の約7割が高圧引込ケーブルと区分開閉器(PAS)によるもので、2020年度から2021年度の波及事故のうち高圧引込ケーブルが52%を占めています。同じ資料は、製造後20年を超えるとケーブル事故が著しく増えるとして、長く使ったCVケーブルの計画的な更新を勧めています。

一方で、更新推奨時期に達していないケーブルの事故も増えています。中部近畿産業保安監督部近畿支部と製品評価技術基盤機構(NITE)は2021年6月、近畿地域の絶縁破壊事故のうち15年未満のケーブルが占める割合が2018年度の13.3%から2020年度の43.8%に増えたとして注意喚起を出しました。事故の多くは地中管路に敷設されたE-Tタイプで、原因は水トリーでした。15年は、日本電線工業会の資料を根拠に多くの事業場が更新推奨時期として管理している値です。経済産業省は2023年12月の補足周知で、劣化の兆候があれば推奨時期前でも速やかに更新することを求めています。

劣化診断の方法 停電診断と活線診断

診断方法は、停電が必要なものと、運転したまま行えるものに分かれます。

方法停電見るもの特徴
絶縁抵抗測定必要絶縁体の絶縁抵抗、遮へい層と大地の間の絶縁抵抗年次点検で毎年行う基本の測定。高圧絶縁抵抗計を使う
直流漏れ電流法必要直流高電圧を段階的に加えたときの漏れ電流の大きさ、時間による変化、相間のばらつき水トリーの検出に使われてきた代表的な停電診断。診断機関が行うことが多い
直流成分法、直流重畳法不要運転中のケーブルの接地線などに現れる直流の成分水トリーが生じた絶縁体に特有の電気的な変化を活線のまま検出する
交流重畳法、低周波重畳法不要商用周波数と異なる周波数の電圧を重ねたときの電流の成分活線で絶縁体の状態を見る。測定会社ごとに方式が違う
部分放電法不要端末部や接続部などで生じる部分放電の信号運転状態で検出できる。端末部や接続部の欠陥に向く

日本電線工業会の技術資料「高圧CVケーブルの保守・点検指針」(技術資料第116号、2024年7月改正)には、劣化診断方法の例と活線下の絶縁劣化診断が付録として載っています。

判定の考え方 法令の数値はない

高圧ケーブルの絶縁性能について、法令に絶縁抵抗や漏れ電流の合否値はありません。絶縁抵抗の目安は業界団体の資料にあり、絶縁抵抗測定の電圧と判定基準で表にしています。要注意の値が出たら、直流漏れ電流法などの劣化診断や製造者の診断で最終判断する流れです。直流漏れ電流法と活線診断の判定区分(良、要注意、不良など)は、診断機関や測定器の製造者が自社の基準で示します。報告書を受け取ったら次の点を押さえます。

  • どの方法で、どの条件(印加電圧、時間、天候)で測ったか。
  • 判定区分と、その根拠となる基準値が書かれているか。
  • 前回の診断値と比べて、どの相がどれだけ変化したか。
  • 要注意なら次の診断時期、不良なら更新の提案と停電までの暫定対応をどうするか。

絶縁抵抗が良好でも水トリーがないとは言い切れません。地中管路のE-Tタイプで年数が進んでいるケーブルは、劣化診断を設置者に提案します。

更新の目安 年数と敷設環境で判断する

  • 製造後20年を超えるとケーブル事故が著しく増える(関東東北産業保安監督部の資料)。
  • 更新推奨時期を15年として管理している事業場が多い(日本電線工業会の資料を根拠とする、近畿支部とNITEの注意喚起の記述)。
  • 推奨時期内でも、劣化の兆候があれば速やかに更新する(経済産業省の補足周知)。
  • 水の影響がある場所のE-Tタイプは、年数が浅くても診断か更新を検討する。更新するときはE-Eタイプを選ぶ。
  • 高圧引込ケーブルの事故は波及事故になりやすい。地絡継電器付きの区分開閉器が責任分界点付近にあるかも、あわせて確認する。

いずれも目安で、法令の定めではありません。更新は設置者の費用なので、年数だけで押し切らず、敷設環境、タイプ、診断結果、事故時の影響を並べて説明します。事故が起きたときの手続きは電気事故報告の流れにまとめています。

月次点検と年次点検で見るところ

診断は年に1回か数年に1回ですが、劣化の兆候は毎月の点検で拾えます。月次点検では、端末部の汚損、ひび、変色、ストレスコーンのずれ、シースの傷や膨れ、端末部と接続部の温度(放射温度計で相ごとに比べる)、ハンドホールやピットの水、遮へい層の接地線の腐食を見ます。項目はキュービクルの月次点検の点検項目を参照してください。

年次点検では、絶縁体と遮へい層の絶縁抵抗を測って前年と比べ、端末部を清掃し、ケーブル表面の表示から種類、サイズ、製造者、製造年を記録します。E-TかE-Eかは表示だけでは分からないことがあるので、製造者に製造年と型式を伝えて確認します。地中管路やハンドホールの中は、一般に水の影響があると判断します。製造年、タイプ、敷設環境、測定結果を並べて、診断や更新の提案が要るかを判断します。全体の流れは年次点検の手順と試験項目を見てください。

よくある質問

Q高圧ケーブルの寿命は何年ですか
A

法令の定めはありません。製造後20年を超えると事故が著しく増えるという監督部の資料があり、更新推奨時期を15年として管理する事業場が多いです。水の影響がある場所では15年未満でも水トリーの事故が起きているので、年数より敷設環境と診断結果で判断します。

Q絶縁抵抗が高ければ水トリーはないと言えますか
A

言えません。水トリーの初期は絶縁抵抗に表れにくく、直流漏れ電流法や活線診断で見つかることがあります。地中管路のE-Tタイプで年数が進んでいるなら、絶縁抵抗が良好でも劣化診断を提案します。

Q停電診断と活線診断はどちらを勧めるべきですか
A

停電年次点検に合わせられるなら停電診断、停電の調整が難しい事業場や年次点検の間に状態を見たいときは活線診断です。どちらも診断機関の判定基準と前回値との比較で判断します。

高圧ケーブルの点検結果を電気保安DXで記録する

電気保安DXは、電気管理技術者向けのiPhone、iPad向けアプリです。月次点検報告書は、事業場ごとに点検項目を一度登録すれば、毎月は測定値と良否を入れるだけでA4の報告書になり、前回の値との差分が入力欄に出るので、端末部の温度などの変化に気づきやすくなります。点検項目は事業場ごとに追加や並び替えができます。報告書は1事業場まで無料、Pro(月額2,980円)で全事業場に使えます。点検スケジュールと換算点数の自動計算は無料です。

この記事は、関東東北産業保安監督部の波及事故防止に関する資料、中部近畿産業保安監督部近畿支部と製品評価技術基盤機構の注意喚起(2021年6月)、経済産業省電力安全課の補足的周知(2023年12月)、日本電線工業会技術資料第116号の目次をもとに作成しています。年数と判定は目安であり、法令上の基準ではありません。実際の判断は診断機関の基準と各事業場の保安規程に従ってください。

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