電気管理技術者が新しい高圧需要設備を受け持つときは、設置者が所管の産業保安監督部に「保安管理業務外部委託承認申請」を出し、承認を受けてから業務を始めます。申請者は設置者ですが、書類を作るのは実務上ほぼ委託先です。契約から承認までの流れ、申請書の記載事項、必要書類、保安ネットでの注意点、審査期間の目安をまとめます。
外部委託承認申請とは何か
自家用電気工作物の設置者には電気主任技術者を選任する義務があります。電気事業法施行規則第52条第2項により、電圧7,000V以下で受電する需要設備などについて、要件を満たす電気管理技術者や電気保安法人と保安管理業務の委託契約を結び、産業保安監督部長の承認を受けると、主任技術者を選任しないことができます。この承認を受けるための手続きが外部委託承認申請です。
承認は事業場ごとに受けます。委託先の要件(免状の種類ごとの実務経験、機械器具の保有、2時間以内に到達できる場所にあること、換算点数の合計が33点未満)は電気事業法施行規則第52条の2と平成15年経済産業省告示第249号で決まっており、電気管理技術者の外部委託の要件で説明しています。
新しい事業場を受託するときの流れ
- 受託できるか確かめる:設備が外部委託の対象か、事務所または自宅から2時間以内に着くか、受託後の換算点数の合計が33点未満に収まるかを先に計算します。計算は換算点数の計算方法と早見表を参照してください。事業場ごとの点数は換算点数の計算ツールでその場で出せます。
- 設置者と委託契約を結ぶ:契約書には、保安業務を行う者の氏名、生年月日、免状の種類と番号、点検の頻度、事故時の対応と報告などを書きます。契約の開始日が申請の基準日になります。
- 保安規程を作る、または変える:新設や設置者が変わった事業場は保安規程を新しく作ります。委託先が変わる事業場は、点検頻度や点検基準表を含めて変更します。届出の書き方は保安規程の変更届出書の書き方で説明しています。
- 保安管理業務外部委託承認申請書と保安規程届出書を出す:保安ネットでは、外部委託承認申請と保安規程の届出を一連の手続きとして続けて入力します。
- 審査と承認:不備があれば監督部から問い合わせが来ます。承認されると承認の施行文書が出ます。
- 承認後の処理:事業場番号を設置者に通知し、施行文書を点検ファイルに入れ、点検記録に事業場番号を書きます。
受電日が決まっている新設の事業場では、受電予定日から逆算して申請します。
保安管理業務外部委託承認申請書に書く内容
申請書の宛先は所管の産業保安監督部長で、申請者は設置者の住所と名称(法人なら代表者名)です。設置者の中で代表者から支社長などに権限が委任されている場合は、委任状が要ります。記載事項は次のとおりです。
- 主任技術者を選任しない事業場の名称と所在地
- 電気工作物の概要:需要設備の設備容量(kVA)、最大電力(kW)、受電電圧。非常用予備発電装置があれば出力と電圧
- 委託契約の相手方:電気管理技術者の氏名、生年月日、住所。法人の場合は名称と住所
- 主任技術者免状の種類と番号
- 委託契約を締結した年月日
免状の番号と契約の日付は原本と突き合わせます。申請書と保安規程届出書で事業場の住所や郵便番号が食い違う不備も多いので、提出前に見比べます。
外部委託承認申請の必要書類の一覧
施行規則で定める添付書類は、委託契約の相手方の執務に関する説明書、委託契約書の写し、相手方が施行規則第52条の2の要件に該当することを証する書類の3つです。監督部ごとに様式があり、紙で申請する場合の主な書類は次のとおりです。
| 書類 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 保安管理業務外部委託承認申請書 | 前の見出しの記載事項 | 設置者名で作る |
| 委託契約の相手方の執務に関する説明書 | 点検の回数、事務所から事業場までの距離・交通手段・到達時間、連絡責任者、緊急時の連絡方法 | 2時間以内に到達できることを示す |
| 委託契約書の写し | 設置者と結んだ契約書 | 保安業務を行う者の氏名や免状番号の別紙を含める |
| 要件に該当することを証する書類 | 免状の写し、実務経歴証明書、機械器具保有状況届出書、他に職業を有していないことの説明書、宣誓書など | 2件目以降は内容に変更がなければ省略できる監督部が多い |
| 他の委託先一覧(受託事業場の一覧) | 承認済みの事業場と今回申請分、他に申請中の事業場と換算点数の合計 | 33点未満であることを示す |
| 設備条件確認書 | 点検頻度を隔月や3か月に1回にする事業場で、告示第4条の条件を満たすことの確認 | 毎月点検の事業場は不要 |
| 連絡責任者の要件の確認 | 設備容量6,000kVA以上の需要設備 | 該当する場合のみ |
保安規程の届出には、保安規程の本文、点検基準表、構内図(使用区域図)、組織図を添えます。電子申請では構内図と点検基準表の添付を省略できますが、作成して事業場に保管します。
設備条件確認書は何を書くか
設備条件確認書は、月次点検を隔月か3か月に1回にする事業場で、平成15年経済産業省告示第249号第4条の条件を満たすことを確認する書類です。保安ネットでは申請画面の中のチェック項目になっています。絶縁監視装置の有無など告示の各号に対応する項目にチェックを入れ、絶縁監視装置を初めて使う申請では装置の試験データと応動説明書を添えます。毎月点検の事業場では要りません。頻度の条件は月次点検を隔月や3か月に1回にできる条件、装置の条件は絶縁監視装置の仕組みと、隔月点検にするときの取り付け条件で説明しています。
保安ネットで申請するときの注意点
産業保安監督部は保安ネットでの電子申請を標準の方法にしています。紙より添付書類が少なく、審査も早く終わります。関東東北産業保安監督部の資料では、保安ネットの審査期間は2週間、紙の申請は施行文書の郵送到達まで3週間から1か月程度です。九州産業保安監督部の令和3年5月の集計では、平均処理日数は電子申請4日、紙申請30日でした。
- 手続選択で「保安管理業務外部委託承認と事業用電気工作物の届出/変更の届出」を選び、外部委託承認のあとに保安規程の届出を続けて入力してから提出します。途中で「閉じる」や「完了」を押さないようにします。
- 新設と設置者変更は提出区分を「新規」、委託先の変更は「変更」にします。新設では確認事項に新設の旨と受電予定日、設置者変更では旧設置者名と旧事業場名を書きます。
- 委託先の変更では、確認事項に旧委託先名を書き、変更年月日は委託契約の有効期間の開始日にします。
- 事業場番号は委託先が変わっても変わりません。
- 委託先が設置者に代わって提出する場合は、設置者との関係が分かる資料が要ります。契約書に代理申請の文言があれば省略できる監督部もあります。
- 提出後は内容を直せないので、直すときは監督部に電話して差し戻してもらいます。
よくある質問
- Q申請は電気管理技術者が自分の名前で出せますか
- A
出せません。申請者は設置者です。委託先が代わりに保安ネットで入力することはできますが、申請者の欄は設置者にし、設置者との関係が分かる資料を添えます。
- Q承認が出る前に契約の開始日が来たらどうなりますか
- A
新設なら受電日、委託先変更なら前の契約の終了日から逆算し、審査期間を見込んで早めに出します。期日が迫っている場合は、所管の監督部に先に相談します。
- Q受託中の事業場の設備容量が変わったときも申請し直しますか
- A
承認の申請し直しではなく、委託契約の内容変更の届出で済む扱いが一般的です。扱いは監督部ごとに違うので確認してください。
受託後の点検予定と換算点数を電気保安DXで管理する
iPhoneとiPadで使えるアプリ「電気保安DX」には、点検スケジュールと換算点数の自動計算の機能があります。事業場を登録すると、頻度に応じた換算点数と合計が出るので、受託を増やす前に33点未満に収まるかをその場で確かめられます。年間表、今月回る事業場の一覧、未実施の事業場の地図表示とあわせて無料で使えます。
この記事は、電気事業法施行規則、平成15年経済産業省告示第249号、経済産業省「主任技術者制度の解釈及び運用(内規)」、関東東北・九州・中部・北海道の各産業保安監督部が公開している外部委託承認申請の手引きと記載例をもとに作成しています。様式と添付書類は監督部ごとに異なるため、提出前に所管の産業保安監督部の案内を確認してください。