高圧で受電する自家用電気工作物には、電気事業法第43条により主任技術者を置く義務があります。置き方は、自社の社員を選任する自社選任、別の会社の社員を選任する外部選任、1人が複数の事業場を受け持つ兼任、電気管理技術者などに任せる外部委託、複数の発電所をまとめる統括の5つです。それぞれの要件と違いを整理します。
主任技術者の選任は電気事業法第43条の義務 5つの方法の早見表
電気事業法第43条第1項は、事業用電気工作物の設置者に、保安の監督をさせるため主任技術者免状を持つ者の中から主任技術者を選任することを求めています。第3項が選任と解任の届出、第4項が主任技術者の誠実義務、第5項が従事者が主任技術者の指示に従う義務です。需要設備に選任できるのは、施行規則第52条第1項の表により第一種から第三種までの電気主任技術者です。例外が2つあり、第43条第2項の許可(免状を持たない者の選任)と、施行規則第52条第2項の外部委託承認です。外部委託は「選任しないことができる」制度で、選任の一種ではありません。原則の自社選任は、内規1.(1)のとおり設置者本人またはその役員や従業員から選び、様式第46で届け出ます。
| 方法 | 主任技術者は誰か | 主な要件 |
|---|---|---|
| 自社選任 | 設置者本人、またはその役員や従業員 | 免状を持ち、その事業場に常時勤務する |
| 外部選任 | 派遣労働者、受託者の社員、条件付きで別事業場の従業員 | 常時勤務と契約での約定。別事業場からは2,000kW未満かつ7,000V以下など |
| 兼任 | 他の事業場に常時勤務している主任技術者 | 7,000V以下、同一設置者や親子会社など、2時間以内、連絡責任者。承認が必要 |
| 外部委託 | 選任しない。電気管理技術者や電気保安法人が保安管理業務を行う | 需要設備は7,000V以下。委託先が告示の要件を満たす。承認が必要 |
| 統括 | 統括事業場に常駐する統括電気主任技術者 | 170,000V未満で連系等をする自家用の発電所など。保安組織と2時間以内 |
外部選任とは 別の会社の社員を主任技術者にする
内規1.(1)は、自家用電気工作物に限って、派遣労働者と、保安管理業務の受託者の役員や従業員を選任できるとしています。いずれも、その事業場に常時勤務し、設置者が主任技術者の意見を尊重すること、従事者が保安上の指示に従うこと、主任技術者が監督を誠実に行うことを契約で約定しているのが条件です。ビル管理会社の社員を選任する形がこれに当たります。さらに内規1.(3)は、常時勤務しない別の事業場の従業員を選任する形を、次の条件を全部満たす場合に認めています。
- 需要設備で、最大電力2,000kW未満、7,000V以下で受電する
- 設置者の従業員、親会社や子会社の従業員、同じ親会社の子会社の従業員のいずれか
- 第一種から第三種までの電気主任技術者免状を持つ
- 勤務先または住所から2時間以内に到達でき、点検は規則第53条第2項第5号の頻度に準じる
- 連絡責任者が選任され、選任届出に要件を満たすことの説明書を添付する
外部選任でも主任技術者は「選任」されているので、保安の監督を個人として担います。手続きは選任の届出で済み、承認は要りません。
兼任とは 1人が複数の事業場の主任技術者になる
施行規則第52条第4項は、1人に2つ以上の事業場の主任技術者を兼ねさせることを原則として禁止し、保安上支障がないと認めて経済産業大臣(1つの監督部の管轄内なら産業保安監督部長)が承認した場合だけ認めています。内規6.(1)の審査基準の要点は次のとおりです。
- 兼任する事業場が7,000V以下で連系等をする
- 兼任先と常時勤務先の関係が、同一設置者、親会社と子会社、同一親会社の子会社、または同一敷地内で保安上の協定を結んだ関係
- 第一種から第三種までの電気主任技術者免状を持つ
- 常時勤務先または住所から2時間以内に到達でき、点検は規則第53条第2項第5号の頻度に準じる
- 常時勤務しない事業場には連絡責任者を置く
兼任先が最大電力2,000kW以上の場合や、兼任先が6以上になる場合は特に慎重に審査されます。申請は様式第44の主任技術者兼任承認申請書です。
外部委託とは 電気管理技術者や電気保安法人に任せる
施行規則第52条第2項は、次の自家用電気工作物の事業場について、要件を満たす者と保安管理業務の委託契約を結び、経済産業大臣の承認を受ければ、電気主任技術者を選任しないことができるとしています。
| 対象 | 条件 |
|---|---|
| 需要設備 | 7,000V以下で受電 |
| 太陽電池発電所、蓄電所 | 出力5,000kW未満、7,000V以下で連系等 |
| 水力、火力、風力の発電所 | 出力2,000kW未満、7,000V以下で連系等 |
| 上記以外の発電所 | 出力1,000kW未満、7,000V以下で連系等 |
| 配電線路 | 600V以下 |
委託先は、個人の電気管理技術者か、法人の電気保安法人です。要件は施行規則第52条の2と平成15年経済産業省告示第249号にあり、詳しくは電気管理技術者の外部委託の要件にまとめています。申請は設置者が様式第43の保安管理業務外部委託承認申請書で行い、流れは外部委託承認申請の手順と必要書類を参照してください。
外部委託では、電気管理技術者は主任技術者ではありません。保安の責任は設置者に残り、電気管理技術者は委託契約と保安規程に基づいて点検と保安上の指導を行います。内規4.(7)は、月次点検と年次点検、漏えい警報への対応、事故時の指示などを求めています。
統括電気主任技術者とは 複数の発電所をまとめて監督する
内規3.は、電圧170,000V未満で連系等をする自家用の風力、太陽電池、水力発電所などを、統括事業場が直接統括する形を認めています。統括電気主任技術者は原則として統括事業場に常駐し、被統括事業場は2時間以内に到達できることが条件です。7以上の場合は特に慎重に審査されます。再エネ発電所向けの制度で、高圧需要設備ではまず使いません。
設置者から見た違いと、電気管理技術者が関わるのはどれか
手続きは、選任と外部選任が届出、兼任と外部委託が承認申請です。選任と兼任では主任技術者がいて監督を個人として担いますが、外部委託では主任技術者がおらず、委託先が保安管理業務を行います。社内やグループに免状を持つ人がいなくても済むのは外部委託だけです。
個人の電気管理技術者として受け持つのは外部委託です。外部選任や兼任は、設置者やグループ会社に免状を持つ社員がいるときの形です。
設置者から「主任技術者が退職するので外部委託に切り替えたい」と相談されたら、受託の可否を換算点数で判断し、保安規程の変更と外部委託承認申請を進めます。保安規程の変更は保安規程の変更届出書の書き方にまとめています。
よくある質問
- Q外部委託で、電気管理技術者は主任技術者の届出をしますか
- A
しません。外部委託は主任技術者を選任しない制度です。設置者が外部委託承認申請を行い、承認後は委託契約と保安規程に基づいて業務を行います。
- Q兼任と外部委託はどちらが設置者に向いていますか
- A
グループ内に免状を持つ社員がいて、常時勤務先から2時間以内なら兼任が選べます。有資格者がいない場合や、兼任先が増えて審査が厳しくなる場合は外部委託が現実的です。
- Q外部選任の「常時勤務」とはどの程度ですか
- A
内規は「常時勤務していること」とだけ定め、日数や時間の数値は示していません。所管の監督部に確認してください。
外部委託で受け持つ事業場を電気保安DXで管理する
電気保安DXは、外部委託で高圧の需要家を受け持つ電気管理技術者向けのiPhone、iPadアプリです。事業場ごとの点検周期を登録すると、年間表と今月回る事業場の一覧が作られ、換算点数も自動で合計されます。これらは無料で、月次点検報告書は1事業場まで無料、Pro(月額2,980円)にすると全事業場で使えます。
この記事は、電気事業法第43条、電気事業法施行規則第52条・第52条の2・第53条(e-Gov法令検索)、経済産業省「主任技術者制度の解釈及び運用(内規)」(那覇産業保安監督事務所掲載版)、中国四国産業保安監督部の自家用電気工作物の手続き案内をもとに作成しています。審査の運用は所管の産業保安監督部に確認してください。